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「ギャにィィィーッ!?」 嬉しい気もするけど、これは結構マズい状況だぞ!? 他の薔薇乙女やミーディアムがいると仮定して、俺が出会ってしまったら立ち振る舞いとかですぐに異変に気づかれるだろうし、アリスゲームなんかに巻き込まれたらまず勝ち目はない! だいたいここはどこなんだ!? 「かあぁぁぁじゅきぃぃぃぃ!」 ん!誰か来る!この声は……柴崎のじいさんの方か! ということは、ミーディアムもアニメ準拠で全員いる可能性があるってことだ。 やっぱり気持ちとしては全員と接触してみたいが……。 あ、じじいが来た。 「カズキ、今日はやけに起きるのが遅かったじゃないか、心配したぞい。」 とりあえず、このじいさんと外に出るための交渉をしなくっちゃなあ……。 「G3……、じゃなかった、マスター、ちょっと用事があるから出かけてもいいかい?」 「ん!? ダメじゃ! ダメじゃ! お前がいなくなったら、ワシは……。」 むぅ……そこまで言うか。 仕方ないな……。 「およびじゃねーぜ、じじい!」 荒っぽい事するしかないか。 「な、なに言ってるんじゃカズk」 「あ て 身」 じいさんには悪いが、あて身で気絶してもらった。 仕方ないよ、ボケてる人ほど意志疎通が大変な相手はないんだから。 さて、とりあえずは他の人達と接触するために、桜田家に向かいたいが……。 道がわからん。 鏡からnのフィールドに入るって手段もあるが方法がわからないし……。 「鞄で飛ぶの……試してみるか」 もちろんこちらも方法はわからない。 まあ、失敗してもnのフィールドで迷うよりはリスクは少ないだろう。たぶん。 鞄に触れ、念を送ってみる。 「『走れ……走れ……飛べ……飛べ……音もなくっ……。』」 するとなんと、鞄がひとりでに宙にに浮き、窓の外に飛んでいく! 成功だ! しかし、問題はまだあった。 俺が乗っていないってことだ。 鞄はどんどん遠ざかっていく。 このままおいてかれるのはさすがにマズい! 俺は窓から全力で跳躍した! 「ぴょっ!」 渾身の掛け声をあげての跳躍は、予想外の飛距離を生み出した。 「ああ、そっか、蒼星石は人間より身体能力が高いんだ!さすがだね!」 予想外の飛距離で跳躍した俺は、鞄を追い越し、民家のガラス窓に弾丸のように突っ込んでいった。
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白「 全選手入場!! アリスは私のもの 邪魔するやつは思いきり殴り思いきり斬るだけよぉ!! ローゼン・メイデン第一ドール 水銀燈 超一流策士の超一流の作戦だ!! 生で拝んでオドロクかしらッ 楽してズルしていただきだ!! 金糸雀!!! 庭師の仕事はどーしたッ ジュンへのツン 未だ消えずッ!! 伸ばすも枯らすも思いのまま!! 翠星石ですぅ!!! 接近戦だったらこの人を外せない!! 超A級庭師 蒼星石だ!!! 紅茶の本場は未だイギリスにある!! 私を驚かせる人間はいないのだわ!! 第五ドール真紅だ!!! 仲良くなりしだい登りまくってやるのー!! うにゅー大好き代表 雛苺だァッ!!! 加えて能力使用に備え超豪華なミーディアムを4名御用意致しました! 引き篭もり 桜田ジュン!! 新人類OL 草笛みつ!! 東洋の病人! めぐ! ……ッッ どーやらもう一名は素性が隠されている様ですが、判明次第ッ皆様にご紹介致しますッッ 」 マ「隠してへん、隠してへん。」 まあわざわざアピールする必要もないんでこのままでもいいか。 珍妙なアナウンスと共にみんながしぶしぶ入場する。 さっきの嫌な予感の正体はこの入場の事だったのかもしれない。 白「えー、じゃあ開会式を始めたいんで皆さん整列して下さーい。」 真「ちょっと、まずあなたが何を企んでいるのかを明かしなさい。」 白「それではまず今回の目的を発表します。今回皆さんにお集まりいただいたのはこれを争奪してもらうためです!」 そう言って示されたのは小さな、上半身だけのマネキンだった。 何か変わった服を着てはいるが、特にシャレたものでもないし、そもそも女の子用ではなさそうだ。 あんなものをこの薔薇乙女さんたちが欲しがるとも思えないが・・・。 真「ああっ、あれは!くんくんがかつて一度だけ死を覚悟したときに着た戦いの探偵装束!!」 マ「流石だな真紅。・・・だけど戦いの探偵装束って一体何なのさ?」 真「くんくんが言うには、あれは東洋の神秘・仙道というもので作られたそうで、身につけていると・・・・・・」 延々と真紅の解説が続く。次第にくんくんの素晴らしさと真紅の愛がいかに気高きものかに脱線してきた。 真「・・・・・・と、いう訳なのだわ。」 マ「ああ、そうだったんだ、ありがとう。」 結局、教えてもらってもさっぱり分からなかった。 真「それでなぜあなたがあんなレアモノを持っているのかしら?商品として製造されてはいないはずよ。」 白「バイト先のコネで特注して作ってもらっちゃいました♪もちろんドールサイズですよ。」 真「そう・・・面白そうじゃないの。私は参加させていただくわ。」 銀「あらぁ、真紅が参加するのなら私も出るわよぉ。簡単には優勝はできないものと思うのねぇ。」 世の常ながら、こういったものの価値は好きな人以外には分からないようである。 ともあれなにやら熱い戦いの予感がしてきた。他のメンバーもなんだかんだでやる気になったみたいだし。 白「成り行きで開会の挨拶もなしになっちゃいましたが、このままルール説明の方に移らさせていただきます。 ・各種目で順位や結果に応じた得点を獲得できます。それぞれの種目で最下位の方は脱落です。 ・能力の使用は自由ですがミーディアムが力尽きたらその時点で即失格になります。 ・全四種目が終了した時点での勝ち残りのうちで得点が最多の方が優勝です。 ・得点は、基本的には1位 100点、2位 50点、3位 30点、4位 10点、5位 5点 とします。 あと、あなた方のお父様からの伝言で、ローザミスティカの奪い合いはご法度だそうです。 こんな下らないお遊びと神聖なアリスゲームを一緒にするなと釘を刺されました。 信じるも信じないもご自由に・・・。ルールに関しましては以上です。」 マ「はい質問。」 白「なんですか?」 マ「ミーディアムを共有していると不利じゃない?」 白「正直そこまで能力を多用する事は無いと思いますが、一応そういった事にも配慮はしてみました。 個人競技は当然個人参加ですが、団体競技ではチームで参加してもらい、得点や脱落を共にしてもらいます。 もちろん競技の性質上、複数人いた方が有利な展開が予想されるようにはなっています。」 翠「そうすると優勝するのはあくまでも個人で、って事ですね?」 白「はい、そういう事になりますね。えーっと、他にも質問がありましたら今のうちにどうぞー。」 会場は静まり返って他に質問をする者はいない。 白「ではこれで『チキチキ!薔薇乙女だらけの大運動会!!秋の祭典スペシャル』の開会式を終了させていただきます。」 マ「なんとも微妙なネーミングだな・・・。」 何はともあれ、こうして薔薇乙女たちによる大運動会が幕を開けた。
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back/ 薔薇乙女も使い魔menu /next 薔薇戦争は終結した。 トリステイン国内にいたアルビオン残存兵は艦隊ごと投降、まとめて捕虜となった。 思いっきりふんぞり返って『シャルル・オルレアン』号を降りてきた王女イザベラは、 トリステイン高官達の非常に複雑極まりない作り笑いと、事情を知らされない一般兵達の 歓呼の声で王宮へ迎えられた。 彼女は、大后マリアンヌを差し置き、一番にルイズ達との会見を要求した。 謁見の間に通されたイザベラの前に、ヒクヒクと頬を引きつらせ、額に血管を浮かべた ルイズが跪く。 (ちょっと、ルイズ…落ち着きなさい) (わっ分かってるわよ!) 後ろで同じく跪いていた真紅の囁きに、やけくそ混じりに答えるルイズ。だが、やっぱ り声が震えている。 「お、王女イザベラ様・・・こ、ここ、此度の援軍、かか、感謝の言葉もございません」 「おほほほほほっ!!いーのよいーのよぉ!!この前はぁ、あんたの使い魔とぉ、ちょっ とした誤解があったのよねぇ~。そぉれぇでぇ、お詫びでもしようかと思って、来てあげ たのよーっ!」 「お、心遣い。痛み、入ります。 え~・・・私といたしましても、ガリアの首都リュティスを潤す恵み豊かなシレ河のご とき王女の髪が、かように美しいままであることを知り、安堵して胸をなでおろしており ます」 「・・・ガリアは魔法大国だからねぇ。あんた等が、黒こげにしてくれた、あたしの髪を 元に戻すくらい、オチャノコサイサイってやつさ!」 イザベラの流れるような長い髪は、以前と変わらぬ艶やかな青をたたえている。でも、 ルイズの皮肉に引きつった頬は艶やかとは言い難かった。 ルイズは、おのれ~ヌケヌケと~、という内心の怒りに、肩が小刻みに震えていた。そ れはジュンの左右に控える真紅と翠星石も同じ。いや、謁見の間にいる全てのトリステイ ン高官達が『全部ガリアの自作自演だろーが!』という突っ込みを入れたいのを必死で耐 えている。 何しろ彼等の頭上には、今度はガリア艦隊がいるのだ。おまけにガリアとレコン・キス タの関係を示す物的証拠も証言もない。内心、ルイズ達に同情しつつも、これで納得して 帰ってくれるなら、と考えていた。それに、思いっきり好意的に解釈するなら『トリステ インの力を認めて侵攻を諦め、和平を申し出に来た』と言えなくもない。 トリステインの人々の祈りを知ってか知らずか、ガリア艦隊はさっさと帰って行った。 ガリア王ジョゼフ一世とマリアンヌとの会見の日取りだけ決めて。 ちなみにジュンは、イザベラの前に跪いたまま、力尽きて気絶。そのまま丸一日こんこ んと眠り続けた。 後日、未だあちこちに焼け跡を残すトリステイン城に、両用艦隊を率いる『シャルル・ オルレアン』号からジョゼフ一世が降り立った。 大后マリアンヌ始め、マザリーニなどが総出で出迎えたガリア王は、マリアンヌに駆け 寄っていきなり抱きつき頬にキスをして、一気にまくしたてた。 「おおっ!麗しき女王陛下よっ!!トリステインの友人達よ!ご無事で何よりだ!かの恐 るべき戦乱を乗り越え、今日無事に会う事が出来たのも、始祖ブリミルのご加護に違いな いっ! いや先日の、我が娘の失言については申し訳なく思っているのだよ。まったく、娘は年 若く世間を知らぬゆえ、恐れ多くも女王陛下とトリステインに対する暴言の数々!父とし て顔から火が出る思いだ!かの少年剣士の申し出を取り次いでくれれば、すぐにトリステ インへ援軍を送ったものを!娘へは私から、きつく叱っておいた!どうか無礼の数々は平 にお許し願いたいっ! ともかく、遅くなりはしたが、僅かな弱兵ながらも援軍は送りましたぞ!もちろん礼な どいらぬ!共に始祖ブリミルより連なりし王家の血を引く兄弟ではないか!王家に弓引く 不逞の輩を成敗するに、何の見返りを求めようかっ! さぁ宴だ!諸君等の武功と勝利を、共に杯をくみかわして祝おうではないかっ!!」 出迎えた人々はガリア王のあまりの厚顔さと勢いに、のっけからあっけにとられ何も言 えなかった。 次いでアルビオンからも大使達が降り立った。仲介役だオブザーバーだの何のかんのと お題目を付けて、ゲルマニアの大使や、ロマリアの神官達やらもやって来る。 こうして、薔薇戦争講和会議は戦勝祝賀会と共に開かれた。 アルビオンへの捕虜返還交渉は滞りなく終了。賠償金という名の身代金として、ハヴィ ランド宮殿の宝物庫が丸々支払われることになった。事実上はトリステインの勝利とはい え、上々の収穫である。財務卿であるデムリは「これで街も艦隊も再建出来る!」と涙し た。 うち半分を、マリアンヌはジョゼフに支払おうとした。だがジョゼフは受け取ろうとし ない。再三の申し出にようやく「それなら後日、トリステインに送られてきた宝物の中か ら一つ、私自ら一つ選んで持ち帰ろう」ということになった。 トリステイン王宮の人々は正直「こいつ、また来る気なのか・・・」と、うんざりして しまった。 2/3が焼失したトリスタニアは、都市設計に従った新市街再建が決まった。 空海軍が戦争の主力となった現在では、城壁だの道路の迷宮化だのは防衛上の意味をな さない。なので、城を中心として大通りを放射状に延ばした、壮麗優美かつ経済活動に都 合の良い街が設計される予定である。 トリステイン軍は、生き残った艦船と没収したアルビオン戦艦を元に再編成中。近衛隊 や竜騎士隊も、同時に没収した火竜を使って再建する予定ではある。ただし航海士官も騎 乗する騎士も著しく不足しており、実現には大きな困難が予想されている。 ウェールズは、『イーグル』号と共に無事帰還。『イーグル』号はトリステインで唯一 大きな損害の無い戦艦であったため、暫定ながらトリステイン艦隊の旗艦とされた。また、 正式にトリステインへの亡命受け入れが宣言された。 ワルドは、ジュン達が秘密を守ったため、無事にトリステインへ戻る事が出来た。所領 を増やし、爵位も伯爵に上がった。ただし魔法衛士隊が壊滅しているため、正式な役職に ついては現時点では宙に浮いている。 アンリエッタとウェールズの婚儀は、当人達が 「艦隊が半壊しトリスタニアが灰になった今、我々のためになど金や人を割くなど、とん でもない!第一、既にルイズを巫女として結婚式を済ませました」 と、頑なに拒否。さすがにそれは王家として示しがつかぬとマザリーニが、そして会議 において少しでも存在意義を示したいロマリアの神官達が翻意を促し、結局王宮内の焼け 残った教会で結婚式のみ上げる事になった。 神官として式を取り仕切るのは、左が鳶色で右は碧眼の「月目」が特徴的な、線の細い 中性的美少年。新郎新婦と同じくらい注目を集めつつ、各国の貴人重鎮が居並ぶ割りには 簡素で素っ気ない式を、無事に執り行った。 アルビオンに対しては、トリステイン・ゲルマニア・ロマリア、そしてガリアも含めて のハルケギニア大陸封鎖令が宣言された。これはアルビオンとの交易を禁じ、アルビオン を大陸から孤立させることで経済的打撃を与え、レコン・キスタの弱体化を待つ、という ものだ。 と言っても、アルビオンはそんな宣言を待つまでもなく、地理的に最初から孤立してい る。交易が出来なくなって経済的打撃を受けるのは他の国も同じだ。おまけに、裏でアル ビオンと通じていた事が公然の秘密となっているガリアまで一緒になって出した宣言なの で、実効性は疑わしいと見られている。 市井では、『大陸でのレコン・キスタの活動を王家一丸となって封じる』と言う意味の 共同宣言、と評されている。 当の神聖アルビオン共和国はというと、表面上は落ち着いていた。主であるガリアに裏 切られたという形ではあるのだが、別に何かガリアから表立っての支援を受けていたわけ ではないのだから。 だが、アルビオン艦隊は全滅し、天下無双と呼ばれた竜騎士を100騎も失った事にか わりはない。おまけに、身代金として宝物庫の中身を全部トリステインに支払わされてし まった。内戦で国家財政は困窮していたというのに。 オリヴァー・クロムウェルの権威失墜は隠しようもない。遠からず内紛を起こす、と目 されている。 ルイズやギーシュをはじめ、多くの生徒が学院に帰還した。無論、戦死した者も多い。 数を減らした男子生徒達は、女生徒達と警護の女性騎士達に拍手と涙と熱い抱擁、そして 未だ癒えていなかった傷を治す『治癒』魔法で迎えられた。 特に、『たった一騎でアルビオン艦隊と渡り合い、壊滅させた』ルイズ達は、歓喜の渦 の中に放り込まれた。真紅も翠星石も、すっかり仲良くなったメイド達に囲まれ抱きしめ られ、もみくちゃにされてしまった。 当然ジュンもその中で、特に一番に駆け寄ってきたシエスタに、熱いキスと力の限りの 抱擁を受ける、はずだった。 だがシエスタを追い抜いて駆け寄ってきたスカロンに、 「きゃあーーっ!!凄いわすんごいわあーー!!こんな可愛いのに強いわ救国の英雄だわ なんて~!!もう我慢出来ないわ!お願い抱かせてキスさせてえー!!」 んぎゅーぶちゅうぅ~~「ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁ」 ヘロヘロだったジュンは抱きしめられ唇を奪われた。 そのまま気絶し、さらに一昼夜うなされ続けるのであった。 それからしばらくして、ようやく戦後の混乱も収まった頃 ―――トリステイン魔法学院、ダエグの曜日の朝。 今日も生徒達がアルヴィーズの食堂へ向かう。 ルイズも食堂へ行こうと部屋を出ると、丁度隣の部屋のドアが開いた。 「おはよう、ルイズ」 「おはよう、イザベラ」 隣の部屋から丁度出てきたイザベラに、イヤそうに挨拶した。イザベラは王冠もドレス も着ず、ルイズと同じ制服に身を包んでいる。 「なんだい、その不景気なツラは。毎度毎度、いい加減にしなよねぇ」 「あーら、ごめんあそばせ!美しき王女様の輝けるオデコに、ついつい目がくらんじゃい ましたわ!」 「そ、それは申し訳ございませんねぇ!今度から、あんたの胸のように控えめにしてあげ ますわ!」 「ちょっとあんた達ねぇ・・・毎朝毎朝、人の部屋の前でケンカしてんじゃないわよぉ」 向かいの部屋から出てきたキュルケは、もはや朝の恒例となりつつある二人のにらみ合 いに、いい加減呆れていた。キュルケの仲裁すらも、いつものこととなりつつある。 ガリア王は、アルビオンから送られてきた品々から自らの取り分を選びに来た折、マリ アンヌとマザリーニに一つの提案をした。 「我が娘は世間を知らなさすぎる。それが原因で、かの少年剣士と諍いを起こしてしまっ た。ここは一つ留学でもさせて、見聞を広めさせようと思うのだ」 ただし「イザベラの部屋はルイズの隣」という条件を、怨恨の解消だの将来を担う人材 同士の深い交流だのと、もっともらしい理由と共に示された時は、二人とも露骨な下心に 呆れた。 ちなみにジョゼフが光り輝く財宝の山の中から自ら選んだのは、古ぼけたボロボロのオ ルゴール一個のみ。茶色くくすみ、ニスも完全にはげ、ところどころ傷がある。どうみて も骨董品。 これだけ欲の無さを見せつけられた以上、ジョゼフの申し出を断る事は出来なかった。 トリステインとしても、留学生の受け入れを拒む理由はないし、ガリア王家との友好も深 められる。なので、イザベラのトリステイン魔法学院への留学を快く受け入れた。イザベ ラの部屋の場所くらいの譲歩もせざるを得なかった。 そんなわけで、ルイズとイザベラは晴れてめでたくお隣様。もちろん二人には「仲良く しなさい」との勅命が下された。ジョゼフは去り際に、「時々娘の顔を見によらせてもら いますぞ。ああもちろん!出迎えなんて不要ですからな!」と再訪を約束する事を忘れな かった。 「ちょいとルイズさん、ケンカはだめですぅ」「まったく、毎回よく飽きないものだわ」 そういってルイズの部屋から出てきたのは、真紅と翠星石だ。その後ろからジュンも出 てくる。 「まったく、女ってのは朝っぱらからやかましいわな」 「そうだよ、二人とも。とにかくご飯に行こう」 ジュンは相変わらず小姓の服を着て、デルフリンガーを背負っている。ただし、服の上 にマントを羽織っていた。 彼は薔薇戦争での武勲を認められ、シュヴァリエに叙された。だが今着ているのはシュ ヴァリエの、黒地にビロードで銀色の五芒星が躍るマントではない。白地で、長袖がつい た、何の飾りも素っ気もないマントに袖を通している。 白衣だ。 イザベラもキュルケも、白衣から立ち上る刺激臭に顔をしかめて鼻をつまむ。ルイズも 腰に手をあてプリプリと怒り出す。 「ちょっとお、ジュンったら。いい加減そのマント脱ぎなさいよ!臭いんだから」 「あ、ゴメン。まだ実験の途中なんだ。ご飯終わったら、すぐ戻らないと」 実験、と言う言葉を聞いて、イザベラがキラーンと目を、そしてオデコを輝かす。 「なになに!?また新型の溶鉱炉とか作ってたのかい!?この王女が聞いてやろうッてん だから、さっさと話しな!」 「いや、その・・・」 額を光らせて詰め寄られ、ジュンはちょっとタジタジ。 「きー!ガリアなんかに教える技術は何にも無いわよ!さぁ、朝食にするわよ!!」 「ほらほらぁ、イザベラも早く来ないと、おいてくわよぉ」 「ちょっちょっとお待ちよ!このイザベラ様を置いていくんじゃないわよ」 キュルケに促され、一行は食堂へ歩き出した。いつのまにやら、タバサも後ろをついて きていた。 ジュンは日々、コルベールに師事して勉強に励んでいる。 公爵家で執事としての修行をするよう勧めるヴァリエール公爵夫妻、新たに結成される 近衛隊の一員に勧誘するアニエス、等の様々な申し出が彼に送られた。もちろん彼は全て 拒絶し、学院で勉強に励むことにした。 そして、勉強とは魔法に限らなかった。日本の学校ではほとんどやらせてもらえない、 数々の危険で費用のかかる化学実験も、学院でならコルベールの協力を得て行う事が出来 るのだから。そして同時にコルベールも、ジュンから地球の自然科学を学び取り続けてい た。コルベールにとっては、ジュンが軽く描いた元素周期表ですら、目から鱗が落ちる勢 いだ。 二人が最初に手がけたのは、墜落したゼロ戦の破片をかき集めての材料解析。例えば機 体を構成する、50年以上前の技術で作られたジュラルミン合金。それだけでもハルケギ ニアでは新技術新素材だ。ジュンも化学などを、受験用の公式でなく実践として身につけ る事が出来る 雛苺と蒼星石の復活を目指し、今日も彼は勉強と実験に励む。 ルイズ達が寮塔を出ると、数名の騎士達が入り口に立っていた。彼等はイザベラの姿を 見るや、彼女の前にザッと整列した。 「おはようございます、イザベラ様」 「カステルモールは、どうしたい?」 イザベラがキョロキョロと不機嫌そうに、そして不安そうに周囲を見渡す。 「はっ!ただ今団長は、学院長の下へ」 「お待ちをぉ!・・・カステルモール!ただ今参上致しました!」 遠くから一人の騎士が駆けてきた。ピンとはった髭が凛々しい、二十歳過ぎの美男子。 東薔薇騎士団団長バッソ・カステルモールだ。 留学生とはいえ、イザベラは王女。というわけで警護として東薔薇騎士団員もついて来 ていた。彼等は学院の外の草原に天幕を張って駐屯している。 走ってくるカステルモールを見たとたんにイザベラの顔はパッと明るくなり、そして即 座に怒ったような表情でプイと顔を背けた。 「遅い!団長としての心構えがなっていないね!」 「も、申し訳ありません」 肩で息をつきながら頭を下げる騎士を、イザベラはチラリと横目で見る。 「まったく、あんたはあたしを守るのが仕事なんだ!あたしから片時も離れちゃならない ということを忘れンじゃないよ!? ところで、学院長になんの用だい?」 「は、はぁ。その、先日イザベラ様が申していた、私の寮塔への出入り許可の件なのです が」 「ああ!それかい!それで、どうだったね!?当然ながら、立ち入り許可は下りたんだろ うねぇ!?」 まさにワクワクという感じな顔を寄せてくるイザベラに、カステルモールは頭を下げた まま、すまなそうに答えた。 「いえ・・・。やはり、婦女子のみが住まう寮塔に、警護といえど男性が立ち入る事は許 されない、と」 聞いたとたんにイザベラは激怒して地団駄を踏み出した。 「なんだよ何だよそれはっ!?このイザベラ様の言う事が聞けないってのかい!? 第一、あのギーシュとかいうやつとか、みんな入ってきてるじゃないか!というかジュ ンはどうなんだよ!?その平民なんか、ルイズの部屋でイチャイチャしながら暮らしてる じゃないか!」 そういって指を指されるジュンは、イチャイチャだなんて人聞きの悪い~、と呟きつつ も頬を赤くして俯いてしまう。 壁に八つ当たりで蹴りを入れだしたイザベラをなだめるのは、やっぱりキュルケ。 「まぁまぁイザベラ、落ち着いてよねぇ。ジュンちゃんは『使い魔』ていう特殊な立場な んだしぃ。ギーシュだってバレないようにコッソリとモンモランシーの部屋へ入ってきて るんだから。 つまりぃ、そこの騎士さんもコッソリ忍び込めばいいのよぉ♪」 その言葉を聞くや、イザベラは即座にカステルモールに詰め寄った。 「それだよっ!カステルモール、あんた今夜から、毎晩あたしの部屋に忍び込みな!」 イザベラ以外の全員が、引いた。 カステルモールは、真面目に答えようかどうしようかと、困った。 脂汗をダラダラ流した末に、ようやく騎士は言葉を絞り出す。 「あ、あの、イザベラ様、それは、その・・・無理、です」 「なんでだよ!?」 「いや、その、なんでと言われても」 「なんでも何もないよ。あんた、護衛の騎士のクセに、このあたしの夜間警護をしないつ もりかい!?」 「いえ、そういう事では、なくて、ですね・・・」 ずっと黙って聞いていたタバサが、ようやく一言を口にした。 「夜這い」 聞いた瞬間、イザベラは我に返った。 真っ赤になったり真っ青になったりと繰り返し、周囲からの冷たくも暖かい視線に気付 き、オタオタオロオロと狼狽したあげく右手を振り上げ バッチーン! と大きな音が響いた。カステルモールに平手打ちを喰らわし、ダッシュでどこかへ走っ ていった。 騎士達は慌ててイザベラを追いかけていったが、頬を真っ赤に腫らした団長は、涙目の まま立ちつくしている。 ジュンは何故か、彼が他人に思えなかった。 放課後、ルイズ達とキュルケ・タバサは学院の門に集合。シルフィードに乗って再建中 のトリスタニアへ飛んだ。 といっても彼等は別に街に用は無い。半ば焼け落ちて放棄された貴族の邸宅に降り立っ て、その一室にある大きな鏡の前に薔薇乙女達が立つ。 波打つ光を放ちだした鏡に全員入っていく。 薔薇乙女達はルイズ・キュルケ・タバサ・デルフリンガーのおかげで、ルイズの鏡台以 外の出入り口も沢山発見出来た。おかげで、イザベラと東薔薇騎士団の目が光る学院を離 れ、毎回入り口を変えながら地球へ向かえるようになった。 今や彼等に、ハルケギニアに行けない場所はない、と言っても過言ではない。 ―――日本、深夜。有栖川大学病院の一室。 赤い非常灯が照らす病棟。ほの暗い個室にピッピッピ・・・と機械音が響いている。 懐中電灯を持った巡回の年配看護師がモニターをみつめ、心電図の波形やSpO2と書か れた数字をチェックしている。ベッドで眠る少女の酸素マスクをつけ直し、携帯端末に表 示させたドクターの指示と見比べながら、ダイヤルを回して酸素流量を微調整する。 最後に室内をクルリと懐中電灯で照らし、病室を出て行こうとした。 「・・・?」 ふと看護師は振り返る。そこには洗面台があるだけで、モニターからの規則的な音が聞 こえるのみ。 看護師は、ちょっと首を傾げながら出て行った。 看護師が出て行って少しすると、洗面台の鏡から光と共に人影が二つ出てきた。羽を生 やした少女と、メガネをかけたショートヘアの少女だ。二人はベッドサイドに立ち、ベッ ドに眠る少女を見下ろす。 メガネの少女が『治癒』のルーンを唱え、手をかざす。 からたちの花が咲いたよ 白い白い花が咲いたよ その日の朝、同じ病室では何人もの医者と看護師が、モニターの心電図や血液やらの検 査結果の束をペラペラめくりながら、頭を寄せていた。 ベッド上の少女は、いつものように開け放たれた窓の外を見つめて歌っている。 「・・・やはり、どう考えてもこれは、回復に向かっているとしか」 「しかしね、どうしてリエントリーが、こんな急に自然回復していくというんだ?薬は変 えてないぞ」 「それは・・・分かりません。でもとにかく、これでアブレーションをせずに済んだこと だけは確かかと」 「まぁ、な。波形はPからTまで全て改善か。Qなんか先月まで反転してたのに。どう なってるんだ? 君、最近何か患者に変わった事は無かったかね?」 尋ねられた看護師は、慌てて首を横に振る。 「ふむ・・・どういう事か分からんが、不整脈の頻度は下がり続けている。WBCは正常 値でCRPは減少、免疫も回復。TPだって上昇傾向だ。 根本的治癒にはなってないけど、ともかく、この患者の場合カテーテルアブレーション は時間稼ぎでしかなかったんだ。姑息的手段を取らずに済んだのは幸いだな。 なぁ、柿崎さん。一体何があったんだい?何でも分かる事があれば教えてくれないか な?」 柿崎めぐは、医師の問いかけには何も答えなかった。 からたちの棘は痛いよ 青い青い・・・ 「バカじゃないのぉ?いつまで歌っているつもりかしら?」 医師も看護師も出て行った病室の窓に、水銀燈が降り立った。 「黒い天使が舞い降りるまで」 めぐは水銀燈にニッコリ微笑んだ。 「ふん、言ってなさぁい」 水銀燈はめぐに背を向けて、窓際に腰をおろす。 「ねぇ、最近夢を見るの。同じ夢を何度も」 「ふぅん、どんな夢かしらぁ?」 人形は気のない感じで尋ねる。 「貴方が鏡から出てくるの、メガネの女の子を連れて。その子が私に手をかざすと、発作 が収まって、楽になるの」 「ハッ!バカバカしい、童話じゃあるまいし。ただの夢ね」 「ええ、これは夢。ただの夢。でも、その夢を見始めてから、私の発作は減り始め、熱も あんまり出なくなったの」 「そう?ま、ただの偶然でしょ」 水銀燈は相変わらず素っ気なく背を向け続けている。 「ねぇ、これ食べる?」 チラッと水銀燈が視線を後ろに向けると、めぐが皿にのせたシュークリームを差し出し ていた。 「あら、珍しい物があるわね。どうしたのぉ?」 「親達がお見舞いに置いていったの。美味しいわよ」 「そう・・・」 視線を戻した水銀燈だが、ふとある事に気がついて振り返った。 「美味しいって、あなた、それを食べたの?」 「ええ」 水銀燈は、目を見開いた。『点滴だけでいい。食べ物なんかいらない』と言っていた以 前の彼女なら、シュークリームも食べる事はないだろうから。 「最近ね、食べ物を美味しいと感じるようになったの。病院食がゲロみたいなのは相変わ らずだけどね」 「そう、なの・・・それホントに、美味しいのぉ?」 「ええ、とっても」 そう言ってめぐは、シュークリームのはじっこをかじって微笑む。 「・・・一つ、頂こうかしらぁ」 二人は一緒にシュークリームを頬張った。水銀燈の羽はパタパタと羽ばたいている。 とある公立中学校の職員室、放課後。 担任の前にジュンが立っている。 「いや~、さすがだな桜田。学校に復帰して即、学年トップとはなぁ。もしかして、ずっ と家で勉強してたのか?」 「ん~、この夏はずっと勉強してたのは、本当です。今も、その、塾みたいなのに通って ますから」 「そーかそーかっ!やっぱりなぁ。いやはや、さすがの秀才だなぁ・・・これで、遅刻早 退とか欠席が減ってくれればなぁ」 「世の中、上手く行きませんね」 ぬけぬけと答えるジュンに、担任の梅岡先生も何も言えない。 何しろ彼は、どんな不良生徒よりも出席率が悪いのに、どんな模範生徒よりも成績がい い。そして内申書なんて気にもとめてない。教師にとっては最悪の、最も頭の痛い問題児 と言えた。 彼にとって、大学受験のためだけにペーパーテストを繰り返すだけの高校進学は、無意 味だ。薔薇乙女達のため、伝説上の錬金術を独学で現代に蘇らせようとする彼にとり、日 本での学歴や社会的地位など役に立たないのだから。第一、ハルケギニアだけで十分生活 出来る。 その事をひがんだ他の生徒が、何度もジュンを挑発した。だが彼は全く相手にしなかっ た。実力行使に出る、いわゆる熱血系の教師もいた。が、ポケットに手を突っ込んだまま でヒラヒラと避ける彼に触れる事も出来なかった。 そんな彼が何故いまだに日本の公立中学校に来るのかと言えば、文系知識はハルケギニ アでは手に入らないから。そして、やはり家でPCに向かってるだけでは、最新の地球の 情報は不十分だから。 ガラリと職員室の戸が開いて、女生徒が中を覗いた。 「すいません、桜田くんはいますか?」 「はーい、ここだよーっ・・・て、巴か。どうしたの?」 「お客様よ。近くまで来たから、是非会いたいって」 と言って柏葉巴は、後ろにいた人物に声をかけようと振り向いた。だが彼女が振り向く より早く、その人物はジュンの所へ飛んで来て彼に飛びついた。 職員室の教師達も生徒も、目が点になった。 ジュンがいきなり、白いワンピースをひるがえして飛び込んで来た長いピンク色の髪の 少女に、抱きつかれて熱烈な口づけをされていたから。 たっぷり10秒くらい、小さな体を妖しく愛おしげに絡ませ合った後、ようやくルイズ は唇を離した。 『へっへー、来ちゃった♪』 『おい、ルイズ。なんて事すんだよ。みんな驚いてるじゃねーか』 『あらー?これがこの世界の挨拶じゃなかったっけ?』 『知ってて言ってるだろ?これは日本の挨拶じゃないって』 『もっちろん!だってぇ~、こういう場所でないと真紅と翠星石が邪魔するんだもん』 なんて話しをしつつも、二人は抱き合ったまま離れない。 周りの人々は、さらに目を白黒させた。ジュンが外人の美少女と抱き合いながら、聞い た事もない外国語で突然流ちょうに話し始めたのだから当然だ。 梅岡先生が、近くにいた英語教師に尋ねる。 「先生、あれって英語・・・じゃないですよね?」 「えと、あれは・・・ああ、どうやらオランダ語のようですね。かなりなまってるけど」 「凄すぎだぞ、桜田。・・・というか、お前、何者だ?」 もはや呆れかえった教員達の前に、さらに二人の女性が入ってきた。ブランド物の黒い スーツに、はち切れそうな豊満な胸を収めた赤毛褐色女性、キュルケ。そしてジーンズの 上下を着た青いショートヘアの少女、タバサ。 二人とも、両手に大荷物を抱えている。 『ジュンちゃーん、買い物帰りにちょっと寄らせてもらったのよぉ』 タバサがコクリと肯く。 『ああ、分かったよキュルケさん。それじゃ先生、そろそろ帰りま・・・おっと』 ジュンは軽く咳払いして、喉を押さえる。 「それじゃ先生、そろそろ帰ります」 日本語でそう言うと、ジュンは軽くルイズの背を押す。ルイズは梅岡先生に、ピンクの 髪をペコリと下げた。 「オジャマシマシマ、サヨナラデス」 怪しい日本語で挨拶をして、ルイズはジュン達と共に職員室を去っていった。 後には、呆然とした教師と生徒が残された。 一行はワイワイおしゃべりしながら桜田家に到着。 ルイズとジュンが、彼の部屋に入るのを、窓の向こうの空から見つめる目があった。 次の瞬間、ジュンの部屋の窓に向かって急降下! ガッシャーーーンッ!! ジュンの部屋の窓ガラスをぶち破ったトランクが、二人に向かって突っ込んだ。 だが、トランクは二人を素通りしてしまった。二人の姿は揺らめき、消えてしまう。 『ふっふーん♪残念でした、『イリュージョン』でーっす』 部屋の扉を開けて改めて入ってきたのは、杖を持った本物のルイズ。 「うぬぬぅ、やられたですぅ!」 室内をふよふよと舞うトランクから出てきたのは、翠星石。 「新魔法を、バカな事に使わすなよなぁ」 ヤレヤレと入ってきたジュンは、ポケットからメリケンサックを取り出しルーンを発動 させ、 ガッシャーーーンッ!! もう一枚の窓ガラスをぶち破って突っ込んできたトランクを、ヒョイと身をかがめてか わした。 「いい加減、もう喰らわねーよ」 と言ってジュンが体を起こし、二つめのトランクを白い目で見ると、 どごっ! 後頭部に、さらに飛んできた三つ目のトランクが直撃した。 「やったかしらーっ!上手く引っかかったのかしら!?」 二つめのトランクをパカッと開けて出てきたのは、金糸雀。 「いい気味だわ!公衆の面前で、破廉恥な行為に及ぶ不届き者への罰よっ!」 三つ目のトランクから出てきたのは、真紅。 『ちょっとカナリアッ!あんた関係ないじゃないの!なんであんたまで突っ込んでくるの よぉ!』 ぎゅにぃ~~ 「ひたひ!痛ひぃ~!ゴメンかしら~真紅達悪党にそそのかされたのかしらぁ~!」 詰め寄るルイズに両の頬をつねられて、金糸雀は半泣きだ。 「あっつつつつ、・・・全く毎度毎度ぉ~」 床につっぷしたジュンが、後頭部をさすりながら体を起こす。 その両横に、頬をふくらませてプンプン怒る真紅と翠星石が立つ。 「な、何だよぉ~。・・・悪かったよ、お前等に隠れてあんな」 チュッ ボソボソと謝るジュンの両頬に、真紅と翠星石がキスをした。 キョトンとする彼を無視して、二人はルイズを睨み付ける。 「これで、おあいこなのだわっ!」「ちょーしに乗るなですぅっ!」 『あー!ふんだ、何よそれくらい!だったらこうよっ!』 今度はルイズがジュンに飛びつき抱きしめる。 「お!お前等いい加減にしろぉーーーっ!!」 3人にもみくちゃにされるジュンの叫びは、当然のように無視されるのであった。ワク ワクと眺めている金糸雀にも。 ドタバタとうるさい音が響いてくる1階では、キッチンでキュルケ、タバサ、巴、のり がエプロン姿で夕食を作っていた。 『上の連中は、相変わらず派手にやってるようだわな』 そう呟いたのは、壁に立てかけられたデルフリンガー。 『そのようねぇ。全く仲良いわねぇ・・・あ、タバサ。お塩取って』 タマネギをみじん切りにしているキュルケは、テーブルでジャガイモをむくタバサに声 をかける。 「はい、お塩ですよ」 でも、塩の瓶を手渡したのは、のり。 瓶を先に取られたタバサはキョトンとした。 『ハルケギニア語、分かる?』 「うん、ちょっとだけだけどね。大分、聞き取れるようになったわ」 ボールに入れた牛ミンチ肉をこねてる巴が、それを聞いて尊敬の目でのりを見る。 「驚きました、もう会話も出来るようになったんですね」 『大したものねぇ。こんなに早く聞き取れるようになるなんて、驚いちゃったわぁ』 同じく感心しているキュルケも、のりの日本語を聞き取っていた。 少々の言葉と、いくらかの身振り手振りと、そして大半を占める『なんとなく』によっ て、キッチンの4人は一緒に夕食の花丸ハンバーグを作っていた。 ―――同時刻。ハルケギニア、ガリア領アーハンブラ城。 ガリアとエルフの領土の境界線上に位置する、砂漠の丘の上にある城。その城壁は細か い幾何学模様に彩られている。 現在は廃城となっており、軍事拠点としては機能していない。だが丘の麓にオアシスが 存在するため、城下町は交易地として栄えている。 その無人であるはずの城の上に、数名の人物が立っていた。 「――・・・大丈夫だ。精霊は我らの他に誰もいない、と言っている」 長身で痩せた男が、丘から周囲を見渡して語った。薄茶色のローブに羽付き帽子を被っ た男は、金髪の隙間から長い耳をのぞかせている。 エルフだ。 「くくく、精霊の言葉すらあてにならん。かの者達、まさに風。どこにでも現れるのに、 掴む事も見る事もかなわぬ」 そう言ってさらにくぐもった笑いを響かせるのは、ガリア王ジョゼフ。共も連れずに一 人でエルフとの会見に臨んでいた。 「まぁまぁ、お二人とも。彼等をあまり恐れていては、戦う前から敗北を認めるようなも のですよ」 二人に言葉をかけたのは、エルフの後ろにいる男。細身で長身、薄茶色のローブをまと い、頭はすっぽりとフードで隠している。フードの隙間からのぞく黒髪と短い耳が、人間 である事を示していた。 恐れる、という言葉を聞いて、エルフの男は眉をひそめた。 「我々はあいにく、お前達蛮人とは立場を異にしている。別に魔法人形達と対立していな いのだ。ゆえに恐れる必要もない」 「だが、興味はあるようだな。ビダーシャルとやら」 ジョゼフの一言に、ビダーシャルと呼ばれたエルフは素直に頷いた。 「うむ。あれほどの人形は、我らでも作れぬ。お前のもたらした情報が正しいなら、それ がこの世に7体も存在するというのだ。気にならぬはずがない。 しかも、お前達が『虚無』と呼ぶシャイターン(悪魔)の復活と同時に出現したのだ。 『シャイターンの門』の、ここ数十年の活発化と合わせて、ネフテスの老評議会でも懸念 が広がっている」 「くっくっく・・・そうだろうな。あんなガーゴイルがハルケギニアに7体そろえば、お 前達エルフも太刀打ちできないだろうからな」 黒髪の男は、飄々と口を挟む。 「揃えば、の話しだねぇ。残念ながら残り5体は未発見、というか、本当に7体なのかど うかも怪しいね。それとこちらの情報では、例の虚無の少女と使い魔の少年、エルフと事 を構える気はないようだよ? 虚無だって、4つのうちの一つが確認出来ただけ。残り三つはやっぱり、いるのかいな いのかも分からないままなんだから」 男の口調は、あくまで呑気なものだ。だがその釣り上がった視線は、ジョゼフに不審を 抱かせ続けていた。 ビダーシャルが、意を決したように口を開いた。 「だからこそ、テュリューク頭領は私を派遣したのだ。お前達蛮族の王と交渉するために な」 「ふむ、して要求は?」 「虚無が揃うのを阻止して欲しい。それと、かの虚無と人形達の定期的な情報提供」 「見返りは」 「向こう百年間の『サハラ』における風石採掘権、それと各種技術提供」 「気前がいいな」 「お前達蛮人にとっての光を踏みにじれ、というに等しいのだからな。なにより人形達の 秘密は、お前と同じく喉から手が出るほど欲しいのだ」 ジョゼフは、わかったというように頷いた。 「だが、後もう一つだ。エルフの部下が欲しい」 「分かった。私とこの者が仕えよう」 あっさり即答したビダーシャルに、ジョゼフは拍子抜けした。 当のエルフと後ろの男は、満足げに頷いていた。 「正直、お前から申し出てくれて助かった。お前の下にいれば、かの人形達を直接目にす る機会も得られよう。老評議会の認可も既に受けてある」 ジョゼフは、つまらなそうに肩をすくめた。 ふと王は、エルフの後ろに控える男に目を移した。その男はジョゼフに見つめられて、 彼にニッコリと微笑み返した。 「ところで、その者は誰だ?エルフではなかろう」 問われてビダーシャルは、ようやく後ろの男を紹介した。 「数ヶ月前、我らの集落に迷い込んだ男だ。蛮人とは思えぬ知恵と力を有していてな。我 らネフテスの客人として、様々に力を貸してくれている。 お前との交渉の件を聞き、是非私と共にハルケギニアに行きたいというので、連れてき たのだ」 ビダーシャルに促された男は一歩進み、フードを外してジョゼフに深々と一礼した。 「お初にお目にかかります。僕はロジャー・ラビットと言います。以後お見知りおきを」 男の小さな丸メガネがキラリと光った。 夜のアーハンブラ城。 城から遠く離れた砂漠の中に、ロジャー・ラビット名乗った男は一人立っていた。 ――どうやら、上手くいったようだね―― どこからか、少年のような声が男に話しかけてくる。 男はポケットに手を入れ、大きな赤い宝石を取り出した。その宝石は自ら赤い光を放っ ていて、リング状の光をいくつも周囲にまとっている。しかも、ふわふわと勝手に宙を舞 い始めた。 ――もーっ!ヒナは早く会いたいのぉ!真紅や翠星石や金糸雀やジュンやのりや!みん なと早く会いたいのぉー!!―― もう一つの、こんどは小さな女の子の声が響いてきた。 男のもう一つのポケットから、もう一つ赤い宝石が取り出され、同じく宙を舞う。 「ふふふ、ダメですよ薔薇乙女達。役者が舞台に立つ時を誤れば、どんな劇もくだらぬ喜 劇へと墜ち果てます」 ――ふん。相変わらずだな、ラプラスの魔。雪華綺晶(きらきしょう)から僕らを守っ て逃げてくれたのは感謝するけどね。でも、僕らはお前の暇つぶしに付き合う気はな いよ―― ――そーなのそーなの!ヒナも蒼星石も、真紅達に会ったらすぐ一緒に遊ぶのっ!―― 「ふふふ、分かってますよ。まぁそう焦らないで。アリスゲームは、まだまだ終わらない のですからね。第七ドール雪華綺晶も、この地に遠からず舞い降りる事でしょう。 そして地球とハルケギニアを結ぶ物語も、始まったばかりなのですから。 破滅への序曲か、新世界の幕開けか。そうでなくては観客が退屈してしまいすよ」 そういう男の頭は、徐々に形を変えていく。 シルクハットを被ったウサギの頭へと。 二つの月が照らす砂漠。 ラプラスの魔は、二つのローザミスティカを手にして楽しげに笑っていた。 ―――ルイズとジュンの名は、後の世に様々に語られ続けた。 中でも有名な物語は、無能王と呼ばれたジョゼフとの、長きにわたる抗争だ。第一幕で ある薔薇戦争から始まり、その全てが虚実織り交ぜて人々を興奮させ続けた。 時にはハルケギニアの王家全てを巻き込んだ政治劇。 あるいはエルフ達との命がけの和平交渉。 はたまたイザベラとタバサの確執の仲裁役。 多くはジョゼフとジュンの知略戦として。 その裏では虚無対虚無の魔法戦を。 たまにはジョゼフがジュンの背中にこっそり「チビ」と張り紙したり。 お返しにジョゼフが履こうとしたスリッパを床に接着剤で貼り付けておいたり。 時々お互いを深読みしすぎて動けなくなったり自滅する喜劇ともなった。 そして何より、薔薇乙女達のアリスゲームと、『究極の少女』争奪戦。 ルイズとジュンが、ジョゼフやエルフと紡いだ物語は、あらゆる舞台・歌劇・小説・お とぎ話の題材となる。冒険物語・ラブストーリー・少年の成長物語・戦記物としても、人 類の歴史と共に語られ続けた。 そして彼等が地球とハルケギニアを結び、両世界の架け橋となるのは、それほど遠くな い未来――― エピローグ END back/ 薔薇乙女も使い魔menu /next
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back/ 薔薇乙女も使い魔menu/ next ~アルビオン戦五日前~ 「みんな、準備は良いかい?」 メガネの少年が後ろを振り返り、少女達に尋ねる。 『お、おっけーよ!どんと来なさい!』 麦わら帽子に白いワンピースを着た桃色の髪の少女が、緊張した面持ちで答える。 『大丈夫よ、必ず耐えて見せるわ!』 サングラスに赤いキャミソールを着た赤毛の女性が、気合いを入れる。 『…行く』 水色Tシャツにハーフジーンズを着た青いショートヘアーの少女が、無表情に頷く。 「それじゃ・・・行くよ!」 少年は、扉を開け放った。少女達が後に続いて外に一歩出る。 『『…あ、あ!あっついいーーー』』 桃髪赤髪少女は、ソッコーで回れ右して桜田家に飛び込んだ。青髪少女は、外に出る前 に回れ右してた。 『ああ~、このくぅらーって凄いわねぇ~。外のサウナがウソのようだわ~』 キャミをパタパタしてクーラーの冷気を胸に受けるのは、キュルケ。 『ちょっと~、チキュウがこんなに熱いっつーか、蒸し暑いなんて聞いてないわよ。あん たらよく生きていられるわね。こんなんじゃ、キャミソールなんて下着姿で歩き回りたく もなるわ。 ん~でも、このセンベイって美味しいわぁ』 センベイばりぼりかじってるのは、ルイズ。 『これ…凄い。遠見の鏡?』 TVにかじりついてチャンネルをいじってるのは、タバサ。 トリステインの3人娘は、日本へ来ていた。だけど、日本の夏にはハルケギニア貴族の 誇りも勝てやしない。 ガリアから戻った一行は、何食わぬ顔で朝食へ向かった。戦争前のゴタゴタで、彼等が 昨日の午後からいなくなった事を咎める者もいなかった。 ルイズは宮廷から、明日正午に使い魔を連れて王宮へ参内せよ、との命が下っていた。 キュルケには実家へ避難するよう手紙が来ていたけど、丸めてゴミ箱ポイ。 タバサには、特に何も変化はない。 ・・・つまり、明日の昼までは全員フリー・・・ 3人の頭に浮かんだ事は、口にするまでもないくらい顔に出てた。 3人娘は普段通りに授業を受け(男子生徒が著しく減っていたが)、アニエスという平 民出の女性武官に激しくしごかれた後、ひと眠り。夜を待ちルイズの部屋に集合。ちなみ にジュンと薔薇乙女は、体力回復のため、ずっと休息。 カーテンを何重にも重ね、ドアも厳重に鍵をかけ、ディティクト・マジックで魔法が仕 掛けられてないか調べ上げ、全員で壁や天井や床に細工や覗き穴が無い事を確認した後、 nのフィールドへ旅立った。 タバサが命じられた北花壇騎士としての任務や、アルビオンとの戦争等について、相談 するために。そして何より、異世界を見たくてしょうがないから。 「いやぁ~、そう言われてもなぁ…この夏は凄い暑さだったんだ。おかげでもう九月末な のに、この有様だよ。特に今日は酷いや」 『んも~ぅ、せっかく異世界を見回るつもりだったのにぃ。これじゃ外に出れないわぁ』 『ちょっとキュルケ。あたしたちは別に遊びに来たんじゃないんだかんね!重要な作戦会 議のために来てるんだから!』 ルイズは、ずずずぅ~と派手に音を立てて、ストローでコーラを飲み干す。 『うわっ!?なにそれ、その真っ黒で泡だらけの!美味しいの!?』 『うーん、炭酸水に砂糖たっぷり入れたって感じかしら?色は不気味だけど、なかなか刺 激的ね』 『へぇ~、ねぇジュンちゃーん。あたしもちょうだーい』 「あ、今姉ちゃんが入れてくれてるよ」 と言ってる所へ、のりがお盆にコーラだけでなく、色んなジュースを入れてきた。 「は~い、みなさーん!お待たせしましたー」 パパッ 音もなく寄って来たタバサが、残像も見えない素早さでコーラとアイスティーを取って いく。 『あー!それあたしも飲みたかったのにぃ!』 『まぁまぁルイズ、他にもあるんだからさぁ。慌てないの!』 キュルケはスプライト、ルイズはアップルジュースを口にする。 『うわー!炭酸水をこんな甘くするなんて、びっくりだわぁ!』 『へぇ、リンゴを飲み物にしちゃったのね。凄い甘さねぇ』 タバサも、無言無表情ながらも、頬が緩んでるように見える。 「ねぇねぇジュンくん、なんて言ってるの?」 「ん?ちょっと変わってるけど、すっごく甘くて美味しいってさ」 「うわ~、よかったぁ!それじゃ、お昼ご飯に花丸ハンバーグ作っちゃうね! それにしても、残念だなぁ、あたしもハルケギニア語がわかったらいいのになぁ。お姉 ちゃんもお話したいなぁ」 キャイキャイ楽しげにおしゃべりする2人と、クールで無口な少女を眺めて、会話の輪 に入れないのりは、嬉しくもため息をついてしまう。 「ハーイ!みんなぁ、お洋服をぉさ・ら・に!たっくさん持ってきたわよー!」 「なめらかプリンやチーズフランや、とっておきのモカロールも持ってきたかしらー」 廊下から大荷物を両手に抱えてるのは、金糸雀と草笛みつ。 『わー!やったぁ!どれどれ見せてよー!へーこれ何?さまーにっとっていうの?』 『おお、これがチキュウ女性の必須アイテムという、ぶらじゃーなのね・・・なるほど、 これは殿方の脳髄を直撃するわね』 『じゃーじ…動きやすそう…もかろーる、美味しい』 「あ、あのさ・・・お願いだから、3人ともさ・・・ていうか、さぁ」 通訳をしているジュンが、真っ赤になってうつむいてしまう。 『あら、なぁに?』 と、ニヤ~っとしながら、わざとらしくキュルケが聞いてくる。 「僕はここで、通訳しなきゃ、だから、ここで、下着を広げないで欲しい・・・」 キュルケは既にキャミソールを脱ぎ始めてた。もちろん、わざと。 ぽかっ 赤くなったルイズが、ジュンを殴り飛ばす。 のりもみっちゃんも金糸雀もコロコロと笑ってる。 「ところで、真紅と翠星石はどこにいったかしら?こんな大事な会議に遅れるなんて、同 じ薔薇乙女として恥ずかしいかしら!」 「あ、二人なら水銀燈を探しにいってるよ。水銀燈のヤツ、デルフリンガー持って、どっ か行っちゃたんだ」 「失礼ねぇ。ちゃあんと間に合ったじゃないのぉ」 廊下からやってきたのは、自分の身長より遙かに長いデルフリンガーを肩にかついだ水 銀燈。 『へへ、悪く思うな、ジュンよ。なにせこの姐さんのお見舞いってやつぁ長くてよぉ!』 「で、デル公!余計な事いうんじゃないわよぉ!」 『いいじゃねぇか、恥ずかしがらなくてもよぉ。しゃべる剣が珍しいって喜んでくれてた しよ!』 「うううっうるさいわねぇ!」 照れ隠しにデルフリンガーをブンブン振り回す。 その様子に、タバサが首をかしげた。 『スイギントウは、デルフリンガーの言う事が分かる?』 答えたのは、水銀燈の後ろから現れた真紅と翠星石。 「ええ、分かるわ。でも、ハルケギニア語が分かるって事じゃないの」 「私達ローゼンメイデンはぁ、物に宿る魂とお話をするのですぅ。言葉じゃないですぅ」 ちなみに真紅と翠星石は指輪経由で、ジュンへの魔法効果を間接的に受けている。おか げでハルケギニア語を話す事が出来ている。 ピンポーン 呼び鈴が鳴る。扉を開けたジュンの前には、ピンクのTシャツとキュロットスカート の巴。 「よぉ、いらっしゃい。でも日曜は午前中、剣道部の練習じゃなかったっけ?」 「こっちの方が大事よ。お邪魔するわ」 「ああ、悪いな、無理に呼びつけて。ありがとな」 巴も、かしましい女性達の茶会に入っていく。 桜田家の広いわけではないリビングには、魔法学院の少女3人に、草笛みつ、のり、巴 に薔薇乙女4人、さらにはおしゃべりなデルフリンガーもいる。 「さて、それでは、今日来れる人はみんな来たようなので」 ジュンが、立ち上がって司会進行を始める。 「あー!カナのとっておきプリンを盗ったかしらー!?」「あ~らぁ?ごめんなさぁい」 「ちょっと水銀燈、いい加減デルフリンガーを置いて座りなさいな」『まぁまぁいいじゃ ねぇかよシンク。俺もたまにゃあ、こんなステキな姐さんに振られたいぜ』「あらあら、 わかってるじゃないのぉ」 「今後のローザミスティカ捜索と!来るべき対アルビオン戦争!そして高位の『治癒』魔 法を使えるメイジの協力について!」 大きな声で、皆の注意を引こうとする。 「あらぁ、ダメですよキュルケさん!ブラはデザインよりサイズと材質が重要ですよ!」 『と、のりは言ってるですぅ。まぁ、のりは趣味がババァなのでぇ、デザインについては のりに期待してはダメですぅ』『え~?でもぉ、このレースなんかステキよねぇ。絶対こ れがいいわよ』『た、タバサも、ぶ、ぶらじゃあ選ぶの??』『このすぽーつぶら、よさ そう』『う、うう、なら、あたしだって、あたしだって!』「あのルイズさん?ブラは、 胸を、その・・・」 巴には、こちらの寄せてあげるブラを使ってみては?・・・なんて口が裂けても言えな かった。 「今!みんなで!話し合おうと!!」 声を必至に張り上げるジュン。 パシャパシャパシャっ! 「うっわー!これよこれなのよ!!これぞまさに天使!?悪魔的天使だわー!!」 みっちゃんは凄いテンションでデジカメ撮りまくり。 「ちょ、ちょっとぉ~。あんたさっきからなんなのよぉ」 水銀燈は、その不気味なまでの勢いに、すっかりタジタジ。 「いい!白銀の長い髪!黒い翼に逆十字ドレス!まさにこれは、シニフィエとシニフィア ンの具現化よぉ!」 パシャパシャパシャパシャパシャパシャ! 「ちょっとあんたぁ・・・いい加減にしなさいよ!」 「そうっ!その表情よっ!!愛と狂気を併せ持つ、甘い毒っ!!さぁほら、剣をこうかざ してっ!」 水銀燈の赤い目に睨まれても、怯むどころかますます興奮してる。あまりの勢いに押さ れて、渋々デルフリンガーを八相に構える。 「きゃーっ!!これよこれ!!っさっすがローゼン!!伝説の人形師!!まさに天才の技 だわぁあーー!!」 『お、おで、れーたな・・・すんげえ女だなこりゃ』 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ! 「人の話を聞けえーーーーーーーーーーーーっっ!!!」 ジュンの絶叫が、残暑厳しい街に響き渡る日曜日なのであった。 ―――トリステイン魔法学院 深夜 ルイズの部屋 日付が変わり、アルビオン戦四日前となった。正午には、ルイズ達は王宮へ行かねばな らない。 真っ暗な部屋に、鏡台からの光りが満ちる。 緑の光玉が鏡面からちょっとだけ覗く。しばしの後、紅・緑・紫・金色の光りが室内を 飛び回り、鏡面を出入りする。そして、どやどやと大小様々な人々が鏡からわき出した。 「よーっし、どうやら安全ね」 腰に手を当てて安堵したのはルイズ。 「廊下は、大丈夫」 扉をちょっとだけ開けて外を確認するジュン。 「外は・・・大丈夫、何もいないわ」 何重にも重ねられたカーテンをめくって外を確認するのはキュルケ。 「室内、魔法反応無し」 ディティクト・マジックを室内にかけるのはタバサ。 『うっわー!っこっこここがハルケギニアなんだぁ!写真撮らなきゃ撮らなきゃ』 といってデジカメを手にして窓へ向かおうとしたみっちゃんの目の前に、水銀燈が手に するデルフリンガーが突き出された。 『ちょっとあんたぁ?今回の作戦、忘れたっていうのぉ?』 『あ、あはは、ごめんなさい、興奮しちゃって』 「まったく、しゃーねー姉ちゃんだよなぁ!」 デルフリンガーも呆れた様子だ。 『大丈夫よ、みっちゃん!この作戦が終われば、自由にハルケギニアに来れるかしら!』 と、朗らかに言う金糸雀の頬を翠星石が、ぎにゅうぅ~っとつねり上げる。 「んなワケないですぅ~!ばれたら大変なのは変わらんですよぉ~!nのフィールドも地 球も、トップシークレットですぅ~!」 『いにゃあ~!い、痛いのぉ~』 「ちょっと翠星石も金糸雀も、そのくらいにして、真面目にしなさいな!」 真紅がふわりと鏡台に降り立つ。その背後から、最後にジュンがわき出した。 「よーっし!みんな揃ったし、早速始めようか」 一同の前に立ち、ジュンが作戦の最終確認をする。 「それでは拠点はここ、ルイズさんの部屋。キュルケさん、タバサさん、デル公、そして ルイズさん、よろしくお願いします」 「任せて!」「うふふ!楽しみだわぁ~」「おうよ!6000年が伊達じゃねぇってみせ てやるよ!」 タバサもコクリと頷く。 ジュンは右手を高々と掲げる。 「それでは、ミッションスタート、1stフェイズだ!タイムリミットは日の出まで!各 員の奮闘に期待する!行けぃっ!」 ぽかっ 「声でっかい!」『かぁっこつけてんじゃないわよぉ』『似合わない…かしら?』 ちょーしこいたジュンに一通り突っ込みを入れつつ、全員nのフィールドへ入っていっ た。 空が白み、学院に朝日が差し始めた頃、全員が鏡台から帰ってきた。ルイズがぐったり とベッドに倒れ込む。 「ぐへぇ~、さっすがに疲れたわぁ」 「ふぅ、とにかく準備は完璧よぉ~。これで上手く行くと思うわ」 キュルケもベッドに腰をかけて息をつく。そのタバサは、もうフラフラだ。杖で体を支 えて立ってる。 金糸雀とみっちゃんが床にべとーっと突っ伏してる。 『か、カナ・・・大丈夫ぅ?』 『カナは、頭脳派、だから・・・肉体労働は苦手かしら…?』 そんな金糸雀の頭を、水銀燈がデルフリンガーでツンツンつついてる。 『なぁにが頭脳派よぉ、おバカのくせにぃ。でもま、よく頑張ったんじゃないのぉ?』 「そうだぜ、みんなよく頑張ったわな!これで、かなり楽になるんじゃねえか?」 ジュンは疲れ果て、椅子にだらぁ~っと腰掛けてる。口を開くのもおっくうそうだ。 「み、みんな、とにかくお疲れ様ぁ~。あとは2ndフェイズまで、ゆっくり休んでね」 「ふぅわ~う、お疲れ様ぁ~」「おやすみ」『それじゃ、またねー!』『うふふふ、次はこ の金糸雀様が、悪人共をとってめてやるかしら!』『あんたの場合、逆にとっちめられる のが関の山ねぇ。ま、せいぜい足引っ張るんじゃないわよぉ』 キュルケとタバサは扉から、草笛と金糸雀と水銀燈は鏡から帰って行った。 「ふぅあ~、それじゃみんな、あたし達も昼まで寝ましょうか」 「だな。王宮へ、か・・・緊張するなぁ」 「あたし達ローゼンメイデンにとっても、晴れの舞台よ。ゆっくり休んで行きましょう」 「ですねぇ。それじゃ、おやすみなさいですぅ」 「おう、なんかあったら俺が起こしてやるからよ。おめーらはゆっくり寝な」 壁に立てかけられたデルフリンガーを見張り役に、4人は夢の世界へ旅立った。 ~アルビオン戦四日前、昼~ コンコン 太陽がかなり天上に上がった頃、ルイズの部屋がノックされた。ルイズ達を呼びに来た のはシエスタ。 「失礼します。王宮より竜騎士隊がお迎えに参りました」 「へ~。遅いと思ったら、馬車じゃないんだ。まぁいいわ、すぐ行くと伝えて」 「承知しました・・・?」 シエスタはルイズの部屋を覗き込む。だが、いるのはルイズと、トランクから出てくる 薔薇乙女だけ。ジュンの姿は無かった。そのルイズの頭には素っ気ない黒のカチューシャ がついている。 「あぁ~らぁ?ジュンがいないのが気にかかるのかしらぁ~?」 「ふぇっ!?し、失礼しました!で、ですが、その、使い魔達も連れてくるようにとのこ とでしたので」 「大丈夫よ。ジュンは今、コルベール先生の研究室に行ってるわ」 「そうでしたか。では、呼んで参ります」 「無用よ。今伝えるわ・・・ジュン、聞こえる?迎えが来たって。・・・大丈夫、もうす ぐ来るって言ってるわ」 「はぁ・・・?」 シエスタには、ルイズが独り言を言ってるように見えた。カチューシャから伸びる棒の 先に付いた、黒くて丸い綿の塊に話しかけているように見えていたから。 コルベールの研究室では、ジュンがコルベールにゼロ戦の具合について尋ねていた。な にせ、1週間ほど前にバラバラにされてたから。 外からは、広場で走らされている女生徒達のかけ声が聞こえてくる 「・・・オーケー、すぐ行くよ」 ジュンは、インカムのマイクを引っ込めた。 「凄いな。その、とらんしーばーというのは・・・こんな離れた場所から自由に話が出来 るとは」 コルベールは、感心しきりだ。興味深げにインカムとトランシーバーを観察している。 「ええ、便利ですよ。ゼロ戦から降ろした機械、あれと似たような物です。ただ、この携 帯用のヤツは小型なので、1リーグくらいしか話が出来ないんですけどね」 「なるほど、あのササキという人の遺品には、色々便利な物があったんだなぁ…今度、見 せてくれないか?」 「ええっと、その、故人の物なので、僕の国の風習上、ちょっと問題が・・・」 ジュンが先日日本で買い集めて持ってきた品々は、海軍少尉佐々木武雄の遺品、という ことにしていた。 「ふむ、そうですか、残念ですぞ。ですが、気が変わったらぜひぜひ!」 「はい。それじゃ、王宮へ行ってきます。また、離陸お願いしますね」 そう言ってジュンはコルベールの研究室を出ようとした。だが、何か言いたげな教師の 姿に気が付いた。 「あの、何でしょうか?」 「君は・・・戦争に行くつもりかね?」 コルベールの表情は、真剣そのものだ。 「まだ、分かりません。おそらく王宮や軍の人は僕たちを狩り出したいでしょうけどね。 僕らはルイズさんの使い魔なので、ルイズさんが戦争に行かないのなら、僕らも行きませ ん」 「ミス・ヴァリエールはなんと?」 「志願するつもりだそうです。でも、女の自分が志願するなんて、お父様がお許しになら ないだろう、と」 「そうかね、そうだろうね・・・で、君自身は、戦争に行きたいのかね?」 冴えない中年男のハズの教師は、刺すような目で少年をみつめている。普段の授業での 姿とはあまりに違う雰囲気に、コルベールの真剣さをうかがいとれる。 「・・・ルイズさんが危険な目に遭うなら、僕らは主を守ります。それに、戦争が始まっ たのは、僕らが余計なマネをしたせいでもあるんですから。責任は取らないと」 「そうか…行かずに済むと、いいな」 「ええ。…失礼ですが、先生は志願されないのですか?」 既に、ほとんどの男性教員と男子学生が軍に志願している。残った女子生徒に対し、ア ニエス率いる平民出身女性士官達が、減った授業の穴埋めとして軍事教練をしている。 「私は教師だ、そしてここは学舎だ。だから私は授業をするよ」 コルベールはにっこり微笑む。それが当然という風に。 「そうですか。それも良いと思います。人殺しなんて、しないで済むなら、それにこした ことはないんですから」 「そうだね。そして私は、君のような少年を戦場に送りたくはないんだ」 「僕も、行きたくはないです。でも、戦争は向こうからも来てしまうんですね。この前の 戦艦の件で、よく分かりました」 「本当だね。まったく、戦争とはイヤなものです・・・」 嘆く教師の顔には、深い悲しみに彩られていた。まるで巨大な重しを担ぐかのように、 苦しみに満ちていた。 学院の正門前に、若い竜と少年騎士が待機していた。柔らかな白い金髪に、少女の様な 顔立ち。竜は風竜。 正門から続く道の横に作られた滑走路。その学院側の端には、ゼロ戦の格納庫代わりに 立てられた、大きなテントの様な物がある。 ルイズと使い魔達とコルベールがやってくると、若い竜騎士はビシッと敬礼する。 「ミス・ヴァリエール及びその使い魔のお迎えに上がりました!自分は未だ竜騎士の見習 いでありますが、全力をもってお送り致します!」 「なんでまた、見習い竜騎士が迎えなの?」 「は!急ぎ王宮へお連れするように命じられたものの、現在竜騎士隊は軍事演習に忙しい ためであります!そのため、見習いの自分が派遣された次第であります!」 「そう、それじゃしょうがないわね。んじゃ、私は風竜に乗るとするわ。ジュンはひこお きでお願いね」 「うん。派手に僕らを見せつけるとしよう。到着したら着陸のナビをお願いするよ。真紅 と翠星石は」 「あたしはゼロ戦に乗るわ」「それじゃ私はルイズさんと一緒に竜にのるですぅ」 「じゃ、コルベール先生。またエンジンお願いします」 「ああ、頑張ってな」 「へへっ、こんなもん見たら、王宮の連中もジュンを平民だなんてバカに出来ないぜ」 ジュンと真紅とデルフリンガーはゼロ戦で、ルイズと翠星石は風竜で飛び立った。 back/ 薔薇乙女も使い魔menu/ next
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back/ 薔薇乙女も使い魔menu/ next 夕暮れの商店街。 冴えない時計屋の中で、老人が少年に古い懐中時計を見せていた 「ええ!これですコレ!こういうのが要るんですよ!」 「本当にいいのかい?若いのに、こんな年代物の懐中時計なんて」 「いえ、これが必要なんです。トリステインに、あんまりこの世界のハイテク品を持って 行くわけにはいかないから。 …ホントはこの古時計でも、かなりヤバイかもしれないけど」 「ふ~ん、そういうものなのかねぇ。まぁいい、大事にしてくれよ」 「はい。で、いくらですか?」 「いや、代金はいらんよ。持って行きたまえ」 「え、いやそいういうわけには」 「蒼星石を目覚めさせるために頑張ってるんじゃろう?だったら、蒼星石のミーディアム じゃったワシも、手を貸さねばなるまいよ。 いつまでかかっても良い。必ず、必ずや、蒼星石を目覚めさせてくれ」 「分かりました。頑張ります」 ジュンは蒼星石の元契約者である時計職人の老人、柴崎氏の時計屋を後にした。 ここは地球、ジュンの住む町。 ジュンは一時ハルケギニアから帰ってきていた。 見慣れたはずの夕暮れ、ヒグラシが鳴き始めた帰り道。だが、何か新鮮に感じる。 木々の代わりに林立する電信柱。、草一本生えないコンクリとアスファルトの地面。前 に立つと当たり前のように開閉する自動扉。火トカゲよりよっぽどモンスターっぽい車。 トリステインではありえない、信じがたい蒸し暑さ・・・ 「ほんのすこし異世界にいってるだけで、何もかも違って見えるんだな…」 ジュンが帰宅すると、リビングでは一騒動起きていた。 「やだー!カナも行きたいー!絶対、頑張れば、みっちゃんと一緒なら、トリステインへ 行けるのかしらー!?」 ダダをこねる人形が、床を転げ回っている。 「なぁ~にを言ってるのですか!?このバカカナは。話を聞いてなかったですかぁ?召喚 されてもいないはずの金糸雀に、みっちゃんさんまで来たら、あたし達が自由に異世界を 往復出来るのが、ばれてしまいますぅ!!」 「そうよ金糸雀。翠星石を連れて行くのだって、本当はかなり危険だったのよ。 幸い翠星石の服がたまたま緑色だったから『最初からジュンや私と一緒に召喚されてい たけど、草むらの中に隠れて見えなかった』とごまかせたのよ。もうこれ以上は、ごまか しようがないわ」 「あ、あたしの髪と瞳も緑なのだけど、どうかしら?」 ジュンは「むりむり」とつぶやいた。 黄色のベビー服みたいな服にオレンジ色のドロワーズ、 緑の髪を、お下げのロールヘ アにしているのは、ローゼンメイデン第2ドール金糸雀だ。 ハルケギニアに行きたいとダダをこねて、ソファーで紅茶を飲んでいた真紅と翠星石に 怒られていた 「でも、でも、みっちゃんも向こうの世界が見たいって、すっごく見たいって、写真も沢 山たっくさん撮りたいって言ってるから…」 ジュンはため息と共に、泣きそうになりながらダダをこねる金糸雀の肩を叩いた。 「あのさ、金糸雀…草笛さんの気持ちは分かるけど、でもさ…向こうの言葉、分かんない だろ?」 「う、そ、そうなのかしら?」 「そうだよ。僕と真紅と翠星石がハルケギニア語を話せるのは、この左手のルーンのおか げなんだ。ルーンと指輪を通して会話出来るから、向こうの世界でもなんとかやっていけ るんだよ」 「うう…いくら薔薇乙女一の頭脳派、この金糸雀でも、異世界の言葉は無理かしら…」 金糸雀は今にも鳴き出しそうなのを我慢していた。 「で…ねえちゃんは何してんの?」 ジュンは、ハァヒィ息つきながら大荷物を両手に抱えてやって来たのりに、冷たい視線 を送っていた。 「はぁふぅ…これはねぇ、ジュンくんの着替えでしょ、お弁当でしょ、それからルイズさ んへのお土産と、あと、巴ちゃんからもらった夏休みの宿題と」 「却下!」 「ええぇ!?ダメよぉ、ちゃんと着替えないと服だって汚れるでしょ?ご飯だって、たま には日本食食べたいでしょ?それにルイズさんにも世話になってるし」 ジュンは頭を抱えた。 「ねえちゃん、イマイチ分かってないだろ…僕はトリステインからは遙か遠くの異国から 召喚されたって事になってるんだよ?それも、着の身着のままで!その僕が、異国の服を ポンポン着替えたりしたら、その服どっから持ってきた?って話になっちゃうじゃない か!」 「うーん、やっぱりそれがばれるとマズイかなぁ?」 「当たり前だろ!ソッコーでトリステイン王宮のメイジ達が、僕らをとっつかまえに来る だろうね。最悪、異世界侵略戦争くらい起きるカモよ」 「あうう…」 のりはがっくりと肩を落とした。 「ちょっとぉ、あんた達ぃ…何を遊んでるのよぉ」 廊下から現れたのは、逆十字の柄が入ったスカートに、黒と白の編み上げドレスの小柄 な女性の姿。背中には黒い翼。水銀燈だ。 「お帰りなさい水銀燈。ご苦労様ね。こっちへ来てお茶を飲みなさいな」 相変わらずソファーで優雅に紅茶を飲む真紅が、水銀燈に紅茶をすすめる。 「ハッ!お断りよぉ…それより、首尾はどうなのぉ?」 「やっぱり時間がかかりそうね。ローザ・ミスティカの情報も無いし、それに…」 真紅は水銀燈をじっと見つめた。 「向こうの薬は、かなり高価よ。おまけに、最大限の効果を発揮させるには、『治癒』の 魔法を使える水系メイジが、魔法をかけながら使う必要があるみたい。でも、それ相応の 効果は期待出来るわ」 「だぁったら話は早いわねぇ…水系メイジとやらを薬ごととっつかまえて、連れてくれば いいんだわぁ」 水銀燈の赤い瞳が危険な光をはらむ。 「止めた方が良いわね。強力な治癒の魔法を使えるメイジであれば、当然強力な戦闘力を 持つわ。それに、ヤケになったり混乱されて、病室で大暴れされたりしたら、もともこも 無いわよ」 「くっ…」 さらりと真紅に受け流された水銀燈は、ぷいっと顔をそらす。そんな水銀燈の横顔に、 真紅は優しく微笑んだ。 「めぐの事がとっても心配なのね。でも、焦っちゃダメよ」 「!・・・なにいってんのよ、だあれがあんな・・・」 水銀燈は真紅達に背を向けた。哀しげにうつむく顔をみられないように。 「ふん。まぁどうせ蒼星石と雛苺のローザ・ミスティカが見つかるまでは、アリスゲーム は中断するしかないんだしねぇ。暇つぶしに、あんた達の異世界冒険に付き合ってあげる わぁ」 そういって、水銀燈は再び倉庫の大鏡へ去っていった。 「さぁ!真紅、翠星石、そろそろ行くとしよう」 懐中時計の時間を合わせたジュンが、二人に檄を飛ばした。 「そうね、そろそろ行きましょう」 「そうですねぇ。ジュン、体力は大丈夫ですかぁ?」 「バッチリだ!んじゃ、ねえちゃん、金糸雀、後を頼む」 残る二人は、涙目だ。 「ジュンくん、無茶しちゃだめよ?ルイズさんの言う事よく聞くのよ?生水飲んじゃダメ よ?なにかイヤな事あったら、すぐ帰ってきてね。それから、それから・・・」 「頑張るのかしらー!ジュンー!真紅ー!翠星石ー!カナは応援してるのかしらー!!お 土産も少し期待してるかしらー!?」 そんな応援を背に受けつつ、ジュンはリビングに置いてある二つのトランクをチラッと見た。 待ってろよ、蒼星石も雛苺も、必ず目覚めさせるからな ジュン達は倉庫の大鏡に入っていった ルイズの部屋には、日の出の朝日が差し込んでいた。 ベッドに座るルイズが、不安げに鏡台を見つめている。 「あいつら・・・いつまでかかってるのかしら。まったく、主を心配させるなんて…」 不意に鏡台が輝いた。 と同時に、どさどさどさっとジュン達三人が折り重なるように鏡面から飛び出てきた。 ジュンがピクピクしながら、震える手で懐中時計を取りだした。ぎぎぎぃ~…と首をき しませ、ルイズの部屋に置いてきた目覚まし時計とも見比べる。 彼は、絞り出すような声でつぶやいた。 「・・・や、やったぁ。しぃ、新記録ぅ・・・」 「なにが新記録よっ!!」 ルイズの枕がジュンの頭に命中した。 第四話 『ルーン』 虚無の曜日の午後。 トリステイン城下町ブルドンネ街大通りに、ルイズ達はいた。 看板や通りを目印に進むルイズ。ジュンは右手に真紅、左手に翠星石を抱えて後ろをつ いている。白い石造りの街、道ばたには露店があふれている。ジュンも真紅も翠星石も、 珍しげに周囲を見物していた。 真紅と翠星石をチラッと見る人はいるが、別に気にするでもなく通り過ぎていく。はた 目には『貴族の娘と、彼女の人形を抱えた小姓』だと思われているに違いない。 ルイズはなんとなく、上機嫌だ。やっぱり買い物はスキなのだろう。 ジュンの左手には、コルベールに言われたとおり包帯を巻いていた。 「えーっと。秘薬店近くだから・・・あ、あった」 汚い路地裏を抜け、四つ辻を曲がって、剣の形をした看板がかかった店を指さした。 薄暗い店内はランプで照らされ、所狭しと剣や槍や甲冑が並べられていた。店の奥で店主の親父がルイズのマントと五芒星に気付いた。ルイズはツカツカと店主の前へ行く。 「旦那、貴族の旦那、ウチはまっとうな商売して・・・」 「客よ。この子に合う武器を・・・」 店の奥でそんな話をしている店主とルイズ。ジュンはと言えば、真紅達を抱えたまま、 店の武具を珍しそうに見回っていた。 「へぇ~、すげぇ~。やっぱ全部本物なんだなぁ…ネットやTVで見るのとは、ワケが違 うなぁ」 ふと真紅と翠星石を見ると、二人とも何か感慨深げに武具を眺めていた。 「なんだ、二人とも武器に興味があるの?」 「そ、そんなワケないですぅ。こんな野蛮な物、大嫌いですぅ」 「私も好きではないわ。でもね…」 真紅は、ふと遠い目をした。 「こういうのを見ると、やっぱりどこの世界も戦いとは無縁でいられない、そう思うの」 ジュンは、黙っていた。彼にとって戦いとは、ゲームやTVの中にしか無い事だ。アリ スゲームに関わってはいるが、彼自身が命がけで戦闘をするというわけではない。 だが、目の前にあるのは本当の武器。皮膚を刺し、肉をえぐり、骨を砕き、効率よく人 を殺すための道具の数々… 真紅が、重苦しく口を開いた。 「私が前に水銀燈と戦ったのは、第二次大戦のまっただ中だったわ」 「え・・・」 ジュンはぎょっとした。完全な少女『アリス』を目差すはずの薔薇乙女から、血生臭い 人間の戦争が語られるとは、あまりにイメージからかけはなれていた。 「今でもよく覚えてるわ。月が綺麗な夜でね、戦車の砲撃や爆撃でボロボロになった教会 の敷地で、お互い必死で戦ったわ。その教会の周りには、沢山の兵士が折り重なって倒れ ていたの。でも、その中のどれだけの人が、まだ生きていたのかしらね」 翠星石も、哀しげに口を開く。 「あたし達ローゼンメイデンにとっても、戦う事は、生きる事ですぅ。それはあたし達の 宿命ですぅ…でも、でもぉ、ケンカはイヤです。姉妹どうしが戦って、誰かが永遠に失わ れるくらいなら、翠星石はアリスにならなくていいですぅ」 ジュンは黙って、壁に掛かる武器を見つめた。 自分はこのハルケギニアでやる事がある。でもこの異世界を動き回れば、当然危険もつ きまとう。真紅や翠星石が守ってくれるとはいえ、いつも必ず傍にいるというわけでもな い。だから、自分も護身用に武器が必要だ。 だが、この武器を手に取れば、自分も相手を殺すということだ。 そんな事を真剣に考えるジュンの背後では、ルイズが店のオヤジと「…剣ならどんなに 安くても200…」「100しか…」なんてやりとりをしていた。すでに足下を見られて いるようだ。 ジュンは、真剣に人間の宿命を考えた自分がバカらしくなった。 「ねえルイズさん。どうせ僕は剣なんかロクに使えないんだから、安物の小さいヤツで良 いよ」 「そーも行かないわよ!こっちも貴族としてのプライドがあるんだから!」 「そうですぜ旦那。それに最近は『土くれのフーケ』なんて盗賊が貴族のお宝を散々盗み まくってるって噂で。貴族の方々は恐れて、下僕にまで剣を持たせてる始末で。へぇ」 「でも、使えない武器持たされてもなぁ」 「おう!わかってんじゃねぇか坊主!」 いきなり、乱雑に積み上げられた剣の中から、男の低い声がした。 ルイズとジュンは声の方向を見たが、誰もいない。店主が頭を抱えている。 「そのボウズのちっこい体じゃ、長剣なんか抜く事すらできねーぜ!悪いこたいわねーか ら、そのボウズのいうとーり、ナイフ辺りにしておきな!」 ジュンは後じさった。声の主は、剣だった。積み上げられた剣の一つから声が発せられ ていた。 ルイズが駆け寄ってきて、サビが浮いたボロボロの長剣を手に取った。 「これってインテリジェンスソード?」 「そうでさ、若奥様。意志を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさあ。ったく、いった いどこの酔狂な魔術師が始めたんでしょうかねぇ?剣を喋らせるたぁ…」 「これにするっ!!」 ジュンが即決した。ルイズはキョトンとして、ジュンと手の中の剣を見比べる。 「ちょっとジュン。何もこんなサビが浮いたヤツにしなくても」 「いや、武器としてじゃなくて!しゃべるって方!」 真紅と翠星石もジュンの腕を降りて、ボロ剣を興味深げに触っていた。 「すごいわ…人形以外で、こんなに強い力を持つなんて」 「おまけに大声でしゃべってるです!信じられんですぅ。どっから声出てるですか?」 ジュンは、お前等の方が遙かに信じられねーよ!っと突っ込みたいのを我慢した。 「へえぇ、これが噂のインテリジェンスソードかぁ」 「おうよ!デルフリンガーってんだ。おめぇ、俺を買う気か?」 「うん、そう、ぜひ!」 「何いってやがんでぇ!自分の体をよく見ろよ、剣をふるどころか、剣に振り回されるの がオチだぜ」 「ふれなくていいよ」 「あん?」 「僕は、魔法の勉強をしたいんだ。特にゴーレムとか、魔法のアイテムとか」 「…おめぇ、俺を分解して調べてぇってのかい?」 「え?いや、そんなつもりはないけど。でも、どうやって作られたのか知りたいんだ。な ら、作られた本人に聞ければいいと思わない?」 「へぇ、なるほどね。平民のクセに魔法を勉強してぇとは…」 剣は黙った。じっと、ジュンを観察するかのように黙りこくった。 しばらくして、剣は小声でしゃべり始めた。 「おでれーた。見損なってた。まさか、こんなちびっ子が『使い手』とは」 「使い手?」 「ふん、自分の実力も知らんのか。まあいい、ボウズ、俺を買え」 「うん、そうするよ。僕はジュン、桜田ジュン。よろしくな。 じゃ、ルイズさん。これでお願いします」 ルイズはちょっと不満げだ。 「え~?それでいいのぉ?もっとちゃんとしたのを買わないと、武器として役に立たない わよ」 「それじゃ若奥様。こちらのナイフもおつけして、100でいかがで?」 「あら、安いじゃない」 「こっちにしてみりゃ、厄介払いみたいなもんでさ。なにせ口は悪いし客にケンカ売るし で困ってましたんで。鞘にいれてれば静かになりますよ。 おいデル公!観念してバラされて溶かされちまいな!」 「うるせぇ!もうこんなシケた店とはおさらばだぜ、せいせいすらぁ!」 武器屋を出たルイズ達は、道ばたで悩んでいた。ナイフは腰のベルトに付けるとして、 どうやってこの1.5メイルほどもある長剣をジュンが持つかで悩んでいた。 腰に差したら地面にズリズリ擦る。デルフリンガーが「勘弁してくれ」と訴えた。 背中にまっすぐさしたら、鞘が足に当たって歩きにくい。 あんまり斜めにしたら、彼の横を歩く通行人に当たる。 あれやこれやと四苦八苦し、鞘のベルトを色々調節したりずらしたり。 どうにかこうにか、周囲の邪魔にならない程度に、背中に斜めにさせた。だが、歩きや すいよう、かなりベルトの位置を下にずらした結果、背後に出た柄部分が、不自然にひょ こっと飛び出ていた。 …ぷっ ルイズがふきだした。真紅も翠星石も、顔を伏せて笑い出したいのをこらえてる。 ジュンも、なんだか恥ずかしかった。それに、どうやって抜けば良いんだろうと悩んで いた。どう考えても、これは鞘から抜き出せない。 試しに、デルフリンガーの柄を掴んで引き抜こうとした。だが、ちょっと柄から引き出 しただけで、案の定腕が伸びきって、それ以上引き抜けなくなった。 「うぷ!ぷ、く、くくくく…」 ルイズは腹を抱えていた。 だが、ジュンはキョトンとしていた。真紅と翠星石はハッとして、顔を見合わせた。 なんだ?なんだか・・・体が、軽い。まるで羽みたいだ 「ジュン!手を離して!」突然、真紅が叫んだ 「へ?」ジュンはキョトンとした。 「え!?なになに?」ルイズは笑いすぎて涙目になりながら、顔を上げた。 「おう、ちびっ子共は鋭いねぇ」少し抜かれたデルフリンガーが、とぼけた声を出した。 「いいから離すですっ!」ボカッ! 飛び上がった翠星石が、ジュンの後頭部を蹴り飛ばした。その拍子にデルフリンガーか ら手が離れた。 「あれ?・・・れ?体が戻った」 ジュンは頭をひねって、自分の体をあちこち確かめるように叩いていた。ついで背中の 剣をおろし、じっと見つめてみた。 「なんだ?今の」 「ジュン!大丈夫なの!?」 「チビ人間!気を確かにもつですよっ!」 真紅と翠星石が慌てて駆け寄ってきた。 「え?へ?な、なに、何の話?」 ルイズも何事かと駆け寄ってきた。 ジュンは自分の体を、手をじぃっと見渡した。 「え~っと…何ともない。でも、さっきちょっと体が軽くなった気が」 「体?頭じゃなくて?」「ジュン、意識はどうですかぁ?」 真紅と翠星石が、ジュンの顔に思いっきり顔を近づけた。 「あの、ホントに、頭は何にもないけど…何が?」 真紅と翠星石は、どいうことだろう、と顔を見合わせた 「ちょっと、一体何なのよ!?」 ルイズは、全く話が見えなかった。 「あたしがつけたルーンの効果が、おかしいっていうの?」 「ええ。つまり、精神支配が弱すぎるの」 「使い魔を支配するためのものなのに、これはありえんですぅ」 「んで、それと僕の頭蹴り飛ばすのと、どんな関係があるんだよ」 城下町からの帰り道、馬に乗った一行はポックリポックリのんびりと、夕暮れの街道を 学院へ向けて進んでいた。 ルイズは後ろにジュンを、真紅と翠星石を前に載せている。馬の鞍には大きな袋が結び つけられ、買ってきた衣類やデルフリンガーが突っ込まれている。 真紅が怪訝な顔で話し出した。 「つまりね、メイジは生物を召喚して、契約して、使い魔にする。そうよねルイズ?」 「ええ、そうよ」 「でも、普通いきなり呼びつけられて絶対服従しろなんて言われて、従うわけがないじゃ ない。だから、コントラクト・サーヴァントは召喚された者の精神を支配するはずよ。で ないと・・・ホラあれ」 真紅が空を指さす先には、ウィンドドラゴンが学園へ向けて飛んでいた。遠目に、長い 赤毛と短い青い髪の人影が乗っているのが見えた。タバサとキュルケだ。彼女らも城下町 から帰ってきた所だろう。 「あんな凄いドラゴンを呼び出したはいいけど、召喚したメイジが食べられましたって結 果になってしまうわ」 ルイズも頷く。 「ええ、その通り。だから使い魔をみればメイジの格が分かるって言われるの。高位の存 在を使い魔にするには、相応の強力な魔力が必要よ」 真紅もうなずき、ジュンの左手を見た。彼の左手はルーンを隠すため、包帯を巻いてい る。 「でも、ジュンのルーンは普段、ほとんどジュンの精神を支配出来ていないの」 ルイズが眉をひそめ、口をとがらした。 「何よぉ~、それって真紅が指輪で邪魔してるからでしょぉ~?召喚した夜に自分で言っ てたじゃないのよぉ~」 「ほとんどって言っただけよ。全く効果が無いワケじゃないわ。でも、この程度ならジュ ンは指輪無しでも、平気でルイズの命令に逆らえるわ。いえ、ルイズがジュンに無茶な命 令なんかしたら、ジュンは腹いせにルイズの顔に落書きしたり、下着のゴムを切ったり、 教室で悪い噂流したりとか、いろんな嫌がらせをしてくるわよ」 「僕は、そんな、ガキっぽいイタズラしないぞ…」 ジュンがジト目で真紅を睨んだ。翠星石がにひひぃ~っと笑いながら答えた。 「例えばの話ですよぉ。まぁその僅かな効果も、あたし達の指輪で妨害しているんですけ どねぇ。ほんのちょっとの力で抑えれてますよぉ。 僅かな効力でも、長期間あびれば、同じ事ですからぁ」 「やっぱり、あたしのメイジとして力が低いからかな…」 ルイズは力なくつぶやいた。だが真紅はルイズをまっすぐ見て、力強く言った。 「そうじゃないわ。いえ…さっきまではそう思ってたけど。でも、その剣を握った瞬間、 違うって分かったの」 「何が違うの?」 ルイズが視線を上げて真紅に尋ねる。 「さっきジュンが剣の柄を握った瞬間、強力な魔力がジュンに流れ込んだの。指輪の力を 軽く上回るほどの、ね」 「剣を握った時?…ね、ねぇジュン!」 ルイズは背後で、左手をジッと見つめるジュンをビュンっと振り返った。 「今、あたしの事どう思う!?えと、こう、何か神々しいなぁ~とか、大好きになっちゃ ったとか、あたしのために何でもしてあげちゃう♪とかさ!」 目を輝かせながら、鼻をくっつける程の勢いでジュンに詰め寄った。 「…えっと、ルイズさんを、今、僕が、どう思うかって…?」 「そう、そうそうそう!!」 「…え~っと、えっとね、えと…」 「…ねぇ~どうなのぉ~?正直にオネーサンに言ってよぉ~♪」 「正直に、言って良いの?」 「も、もちろんよ!」 「…わかった。そ、それじゃ言うよ?あのさ…」 「うんうん!」 「もうちょっと、女性としての慎みを持って欲しいというか…僕の目の前で、平気でネグ リジェに着替えるとかいうのは、どうかなぁ~っと」 「・・・そんだけ?」 「うん、そんだけ」 どげしっ ジュンはルイズに、馬から蹴り落とされた。 「キャハハハッ♪ざぁんねんでしたねぇルイズさぁ~ん。話は最後まで聞くですよぉ。確 かにルーンから凄い魔力が流れましたけど、精神支配の方はたいしてかわってまっせーん なのです♪」 翠星石がルイズを指さしながら、爆笑して言った。 「で、でも!だったらその魔力って!?」 「そぉれはですねぇ…ジュン、腰のナイフを手に持ってみてくださぁい」 「いつつつ・・・全くなんだってんだよ…たく、尻いってー」 腰をさすりつつ、ジュンは右手で腰に挿したナイフを引き抜いた。 「!?」 瞬間、ジュンはハッとした顔になった。ルイズが怪訝な顔でジュンを見つめる。 「どうしたの?ジュン」 「尻が・・・」 「尻?」 「尻が、痛くない!」 ガクッ そんな効果音が聞こえそうなほど、ルイズは落胆した。 「何バカなこと言ってんのよアンタはー!」 と言って彼女は荷物のデルフリンガーを引っこ抜いてジュンに投げつけた。 パシィッ! 彼は、左手で投げつけられたデルフリンガーの柄を掴んで受け止めた。鞘だけが慣性の 法則に従って、後ろの草むらまで飛んでいった。 「あら?」「あれ?」 投げたルイズも、受け止めたジュンも、予想外の結果に目が点になった。 「なんだ、おめぇ。ジュンとか言ったか?自分の力も知らなかったのかよ」 「自分の力?」 いきなりデルフリンガーに言われ、ジュンは更に訳が分からなくなる。 「左手の包帯、外してみな」 「包帯・・・」 ジュンは右手のナイフで、包帯を切り裂いた。そこには、光り輝くルーンがあった。 「「ルーンが光ってる…」」 ジュンとルイズの声がハモる。二人ともルーンを凝視し続ける。 翠星石が馬の頭に立ち、ビシィッとルーンを指さした。 「それこそが、そのルーンの力なのでぇーっす!そのルーンは、体を強化したり、痛みを 消したりする力があるんでぇす! 翠星石がジュンの頭をけっ飛ばしたのはぁ、最初、ルーンの精神支配が強化されるかと 思ったからですぅ。だから柄を急いで離させたんですぅ。でも、どういうわけか、強化さ れたのは体だけでしたぁ」 「ええ、それも桁ハズレにね」 真紅は不安げにルーンを見つめる。 「それを一発で見抜くチビッ子共は、本当に鋭いやな。俺はおでれーたぜ」 剣の表情は分からないが、確かに驚いたんだろう。 ジュンが、ゆっくりとデルフリンガーに視線を移した。 「なぁ、デルフリンガー…お前、僕を『使い手』って呼んだよな?」 「おう、呼んだぜ」 「『使い手』って、何だ?」 「忘れたっ!」 全員見事にズッコケた。 「いやー、昔むかしに覚えがあるんだよ、そのルーンの感じはよ。でも6千年も生きてる とよぉ、昔の事なんか一々覚えてられねーだろよ?」 「6千年って…」 ジュンがあからさまにうさんくさそうな顔をした。 「そうあやしそうな顔するなって。ともかく、俺はおめぇの力を知ってる。そして、そい つは武器を手に持つと発動する。そういう事だ」 「ホントかなぁ…確かに体はホント軽いんだけど」 ジュンは相変わらず半信半疑だ。 「使い魔として契約すると、ただの猫がしゃべれる猫になったりとか、特殊能力を得る事 があるって言うけど、おそらくそれね。 よし、試してみましょ。とりあえず、ジュン。走って」 「ルイズさん…まさか学院まで、走って帰れッて言うの?」 ルイズはにんまり笑った。 「そのまさかよ、頑張ってね♪」 「冗談はおいといて、そろそろ後ろ乗せてよ」 「あらあら、あたくしは由緒正しい貴族のレディですものぉ~。殿方と一緒の馬に乗るな んてはしたないマネ、とても出来ませんわぁ~♪」 ジュンは、やっぱりどう思ってるかなんて正直に言うモンじゃない、と悟った。 しょうがなく、左手の包帯をまき直し、右手にデルフリンガーを握ったまま、馬の横を 走ってみた。 既に夜も更け、月明かりに照らされた静かな草原。 少女を乗せた一頭の馬と、長剣を持つ少年が疾走していた。 「すごい・・・信じられない!」 ジュンが叫んだ。長い間引きこもり、人並みの体力など無いはずの彼が、人間ではあり えない速度で走っている。 ルイズ達も目を丸くして、何も言えなくなっている。 「へへ、本気になったらもっとすげぇぞぉ」 デルフリンガーだけが、いつものとぼけた調子だった。 「なぁ、僕、思うんだけど、ルーンが指輪の魔力を上回るって事は、ずっとこの状態でい ると、僕、洗脳されるってこと?」 ジュンが、馬と一緒に走りながら、息を切らせる事もなく、尋ねてきた。馬は小走りで 走っている。それでも人間が長距離走り続けれる速さではないはずだった。おまけに月明 かりがあるとはいえ薄暗い夜道だ。道を知っているルイズはともかく、初めて通るはずの ジュンが、全く足を躓かせることもなく、馬と同じ早さで走れるはずがない。 そんなジュンの姿は、ジュンを含めた全員にとって『ありえない』としか言いようのな いものだった。 ルイズの前に座る真紅が、少し不安げに答えた。 「大丈夫と思うわ。確かにルーンの魔力は高くなってるけど、こと人間の精神に関しては、 私たち薔薇乙女の方が上手のはずよ。ルーンの精神支配だけは、変わらず妨害出来ている と思うわ まぁ、ついでにルーンの力も全体的に、少し抑えられてるかも知れないけど」 翠星石はうんうんうなずいて答えた。 「無意識の海にまで潜れるあたし達の前には、そんなルーンなんて安上がりなライトも同 じでーっす!もし洗脳されちゃっても、夢の庭師であるこの翠星石が、必ず助けてあげる ですよ」 だが、ルイズは明らかに浮かない顔だった。 「でも、やっぱり長い間ルーンを使っていたら、身も心もあたしの使い魔になったり、す るのかなぁ…?」 「おう、なんでぇ貴族の娘ッ子。メイジのクセに、使い魔が忠誠誓うのが気にいらねぇっ てか?」 すごい勢いで振り回されているはずのデルフリンガーが、全くいつもと変わりない調子 でルイズに話しかけた。 「いえ、それは嬉しいわ、メイジとしてね。でも…」 ルイズは、馬と共に駆けるジュンを見つめた。しばし、ジュンと見つめ合う。 「そんな事でジュンがあたしの使い魔になっても、あたし、あんまり嬉しくないなぁ…」 そうつぶやいて、ルイズは視線を落とした。 ジュンも、真紅も、翠星石も、うつむくルイズをじっとみつめた そんな彼らの視線に気付いたルイズは、慌てて胸をはった。 「か!勘違いしないでよね、あたしはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴ ァリエール、誇り高きヴァリエール家の貴族よ。あんたみたいなお子ちゃまなんて、ルー ンに頼るまでもないってことよっ! 見てなさいよ!いずれハルケギニア全土に知られるような凄いメイジになって、ジュン が自分から土下座して『下僕にして下さい、犬と呼んで下さい』なんて言わせてやるんだ からね!!」 「ありえねー」 ジュンが呆れてつぶやく。 「う、うるさいわねっ!ゴチャゴチャおしゃべりしてる暇ないわよ!?キリキリ走りなさ いっ!!」 「そろそろ疲れてきたから、馬に乗せて欲しいンだけど」 「そしたら馬が疲れるじゃないの。あんたは黙って走りなさいっ!」 「ひでー!おにー!僕は馬以下かぁ!」 ルイズとジュンを見て、真紅と翠星石はコロコロと笑っていた。 「へへ、貴族の娘ッ子は素直じゃないねぇ」 デルフリンガーは半ば呆れていた。 馬に乗る3人と、走る少年は、月明かりの草原を風のように駆け抜けていった。 「ぜぇー、ひぃー、はぁー・・・ホントに、学園まで、走らせる、なんて・・・」 もう夜も遅くなった頃、フラフラのジュンが学院の門にたどりついた。後ろから馬に乗 ったルイズ達もやってくる。 「いやぁ、頑張ったなぁジュンよ、見直したぜ。これからよろしくな、相棒!」 「凄いですよチビ人間!ちょっとだけ大きくなったかもですねぇ」 「本当に大したものよ。ちょっと見直したわ」 そうデルフリンガー・翠星石・真紅に褒められたジュンだが、もうヘロヘロで、全然耳 に入ってない。学園の門に倒れかかって、ゼーゼーと肩で息していた。 「ほら、ジュン。学院に入ったら、剣はしまいなさいよ。それと、馬を返してきてね」 「わーったよー・・・ゲホゲホ、ほんと、人使いが、荒い、んだから」 ジュンはデルフリンガーを鞘にしまって背中に担ぎ、真紅と翠星石を乗せたままの馬を 馬小屋へ連れて行く。 学院の門をくぐると、誰もいない広場に見慣れぬ馬車が停まっていた。 「あら、あれ・・・何かしら」 ルイズがトコトコと馬車に近づき、紋章を確認した。 「おーい、馬は戻してきたよ~…って、あれ?」 広場に戻ってきたジュン達が見たのは、まるで幽霊に追われているかのごとく、全力疾 走で向かってくるルイズだった。 何かこっちに向かって叫んでる。 「どうしたですかぁ?」 「さぁ?」 翠星石と真紅がそんな事を言ってる間に、ルイズはジュン達の所へ駆けてきた。 「にっにっにっ!!」 「「「に?」」」 「逃げるわよっ!!」 「「「え?」」」 「いいから!早くっ!!」 言うが早いかルイズはジュンの手を引っ張って、門から逃げ出そうとする。だが、走り 続けてフラフラのジュンは、もう走りようがない。 「ちょ、ちょっと待ってよ。ルイズさん、一体何なの?てか僕もう疲れて」 「あ!あれは、あの馬車がっ!」 と叫んでルイズは広場の馬車を指さす。 「あれは!あ、ああ、姉さまの馬車っ!」 と言ってルイズはずるずるとジュンを引きずっていこうとする。ジュンはもう、訳が分 からない。 「あの、ルイズさん。お姉さんが来たら、なんで逃げるの?」 ルイズはジュンを引きずりながら、必死で声を押し出した。 「姉さま!エレオノール姉さま!アカデミー!王立魔法研究所の、主席研究員なの!!」 アカデミーが何かはよく知らないジュンだったが、言いたい事は分かった。 「逃げるぞ!」 「ですねぇ」 「いきなりだわね」 ジュン達も門へ向けて走り出した。 ゴゥッ!! 「きゃぁっ!」「うあっ!!」「か、風!?」「な、なんですかー!?」 突然、ルイズ達の前に突風が吹いた。4人とも風に飛ばされ、広場に押し戻された。 門の前に一人の女性が、見事なブロンドを風になびかせて舞い降りた。 「ちびルイズ!どうして逃げるんですか!?」 「ひいぃっ!ね、姉さま…す、すいません~!」 震えてひれふすルイズの前に降り立ったのは、ルイズによく似た20代後半の女性。 王立魔法研究所『アカデミー』の主席研究員。ラ・ヴァリエール家の長姉。 エレオノールだった。 第四話 『ルーン』 END back/ 薔薇乙女も使い魔menu/ next
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1ページへ 3ページへ 151・◆Chiu.cc0Go コスプレさせたら世界一ィィィ!!と目されるコスプレクィーン。 魔法先生ネギま!の長谷川千雨らしい。 152・◆yAMEMABOO. 失踪。 153・ヽ(仮)ノとか ◆KARIWfJ.kI 翠星石ラジオを始めたらこっそり戻ってきてたですぅ。 154・裸の大将 ◆EekgVHRz2A 桐孤の所の住人。紳士。 155・水銀燈 ◆Wing/7DSIY ほのぼの板ローゼンスレのスレ主。マエストロとしての腕も高い。 156・メロン ◆NH7JeCakeo 失踪。 157・紅美鈴 ◆MEIRNFPBWM ほんめいりん。東方シリーズの登場人物。期待の新人。 パチュリーのこすどうですか? 158・◆Q1sgZmAJ4o 心が寂しくなったらたぶん薔薇乙女寿司が効きます。また来るですよ。 159・毒チワワ ◆momoi.qLiw 可愛いものに目がない。おいらロビーの夏実スレ住人。 通称よっぴい。彼女が作った史料館のページはこちらhttp //www13.atwiki.jp/rozensusi/pages/12.html 160・デーモン極東 ◆akGBKdQU0o 失踪。 161・めぐ ◆fk5beA9zwM 鋼鉄のおにいたまスレッドにて雛子をやっていたが、諸事情により引退し、ローゼンメイデンのキャラクターである「めぐ」を名乗るようになった。現在は消息不明。元気にしていますか? 162・アナル国連事務総長 ◆GN10XLCros 自称連合国事務総長。その実は世界保健機関の隣に住むおっちゃん。失踪。 163・梅岡 ◆akGBKdQU0o スクールウォーズ。 ケータイ刑事の五代潤と太陽にほえろの五代潤は同一人物ではないらしい。 164・未定 ◆MAh9oPg.Es 失踪。 165・ジェネシック田井CG ◆URuseU6GSE なな板の長門由希スレの住人。 166・理沙 ◆vRISA/1ZZg 提携店の森の小さな喫茶店の店員。よく気が付く店員の鏡。 167・カン ◆OVER/DkmZY 提携店の森の小さな喫茶店のマスター。コーヒーの達人。 選曲も絶妙なセンスを持っている。 168・真紅 ◆SinkrRv9os なな板の雛苺スレの住人。非常に丁寧でいつも笑顔を絶やさないv 169・迷いうさぎ ◆usagitrNNI どこからともなく迷い込んできた兎。 最近また来てくれるようになったですね。 170・ルーク ◆LukeObGbDA なな板の雛苺スレ住人。豆粒錬金術師にそっくりだけれど別人。 テイルズオブジアビスの主人公。ルーク・フォン・ファブレがフルネーム。 171・梅岡 ◆80d7qz5gjI 自称日替わりメニューの熱血先生。 172・なのはさまのめいど ◆MAID/7CrbQ メイドさん。なのはの友達でよく気が付くメイドの鏡。名前はみつき。 みつきさんまた会いたいですね@なのは 173・◆CSZ6G0yP9Q なな板の雛苺スレの住人。影ながら姉妹を支えてくれている。 174・薔薇十字軍 ◆Dipj6zBJVQ ほのぼの板のローゼンスレ住人。実はこの店の古参だったらしい。 175・(´・ω・`) ◆1pp0EKmyuo 失踪と思ったらひょっこり戻ってきてたです。 今度いろいろ話してみたいですね。 176・霜降奇警甘口 ◆AyLOverMMw 厨房板のローゼンスレからのお客。また来るですよ。 177・メトロン星人 ◆5qCasGG73Q かつてたばこを使って人類を自滅させようと企んだ異星人。 現在はたばこの規制が進んだ所為なのか改心したのか不明だけど 地球を攻める気はないよう。ウルトラセブンの登場異星人。 178・独歩 ◆WLXmCBvygE 時を翔る厨房 ◆WLXmCBvygE 妙に遠慮深い常連客。ここで遠慮は禁物ですよ。 179・鳩 ◆Nr0raUMGa6 ほのぼの板からのお客。妹がいるらしい。 このごろ創世石 ◆F28i2pBQT2を名乗っている。 おいらロビーや厨房、なな板などに出没。 女将にコスプレさせるのが趣味(!?) 180・涼宮ハルヒ ◆j8t8fcmKfQ なな板の長門由希スレの住人。涼宮ハルヒシリーズのメインヒロイン。 最近は勉強に忙しいらしい。根はいい人間。頑張ってほしいですね。 普通の人間には興味はありません。こっそり自作派。珈琲はブラックで。 181・天下無双の雑兵 ◆BJuB7ha/rA なな板のネギま関連スレの住人らしい。キソグと仲がいい。 182・蒼 ◆WITCHr/U8Y 最近おいらロビーに越してきたというローゼンスレ住人。鳩の妹らしい。 姉妹一緒にいるのが羨ましいですね。蒼星石は今頃どうしてるですかね…。 183・うさこちゃん ◆USAKOcUaw2 ほのぼの板にある小さな森の喫茶店の住人。 どっかのウサギの息子とは大違いの可愛らしさです( ̄ー ̄) 184・花 ◆.uRgIO.cVI ほのぼの板の小さな森の喫茶店の住人。 シャイなのかずっと隠れたままでしたが今度はちゃんと出てくるですよ。 もてなすですからね。 185・◆Usagi.QxSA 謎の真紅兎。 186・イザベラ ◆izzYjyDMnM なな板のヨコハマスレの主? 最近は元気がないみたいですが元気寿司を食べに来るですよ。 187・ス〒ラ ◆eWI3IT.vDY 新シャア専用板のBAR STELLARの店主。 カクテル(合成)がとても巧み。 188・朝比奈 みくる ◆orzOU9Vus. なな板の長門由希スレの住人で涼宮ハルヒシリーズのヒロイン。 本人曰く未来人。私的には未来人というより並行世界人な気がしないでも ないですけどねぇ。合言葉は禁則事項です。 189・峠小僧 ◆spirit//8Y これまで名無しでの参加だったが60店目を期にコテへ。 どんどん来て盛り上げていくですよ。 190・郷原 ◆46.b.nlJPg どこから来たのかまったく謎なお客。 この履歴が重くて開けないらしい。 191・金糸雀 ◆kana2mbhYE 金糸雀 ◆r2WpP94KYc なな板の雛苺スレの姉妹。薔薇乙女の第二ドール。 楽してズルしてもいいですからもっと来るですぅ( ̄ヮ ̄)nて。 金糸雀軍団の中将ですぅ( ̄ー ̄) 192・◆774vRnc97g なな板の雛苺スレの住人で親衛隊員。 193・薔薇水晶 ◆DARK6bveIE なな板の雛苺スレの姉妹。意外と常識人! 194・琴莉 ◆KOTORI/Wwg 神坂一はライトベル作者ですよ。 代表作はスレイヤーズですぅ( ̄ー ̄) セルフィのスレッド住人ですぅ。 195・◆SinkuU/vvU 謎の真紅兎2。 196・MercuryLampe ◆ALmM1j/T7I モテない男性板の水銀燈。 推定数十人の信者を残して突如飛び去る。住人は絶望。 おそらくローゼンメイデンの歴代キャラハンで一番人気があったと思われる。 (すくなくとも自分が見た中では) 何度か薔薇乙女寿司に行きたがっていたので 自分がさりげなく誘導しようとリンクを張ったのですが いずれもタイミングが悪くついに薔薇乙女寿司にはきませんでした。 なので名誉参加(希望)者として 故人の意思をくんで自分がここに記録を残しておきます。 言葉は要らないですぅ今度生まれ変わるならうちに来るですよ(`ヮ´)nて 翠星石@女将 197・◆MR2gtNLg86 なな板の雛苺スレの住人で親衛隊員。 198・魚男 ◆/Xr58EtZFE 魚人。ギョッ。…(; ̄ 3 ̄) 199・さば ◆6Pn6FtQTuM しがないサラリーマンがクリスマス帰りに浮かれてるみたいな格好の 正義の味方ですぅ( ̄ー ̄) 200・脂皇帝∑´∋`) ◆r0d9qm.uTI ポケモンの一種らしいですぅ 201・ひないちご ◆9IrVNMlDLw 雛苺スレのバイトさんですぅ。この暑い中ご苦労様ですよ。 がんばっていますね。 202・ななめ ◆Shana.1cYM メロンパンが大好きなななめさんです。 今まで気付かなくってごめんですよ…。 203・ぺぺ ◆pepe.F6WL2 夏実のところのお犬様ですぅ。 DJボブ先生とよっぴ、その他大勢は元気ですか? 204・右京太夫 ◆riQy7en7pA 三国志・戦国板の居酒屋信玄の住人。宣伝は誰がやってるのかは こちらでは把握しかねるですよ。こっちが聞きたいくらいですぅ。 205・タク ◆upGP01mwq6 ミサイル危機で避難してきた味皇の知り合い。 うちはマグニチュード85でも耐えられる店ですからねぇ( ̄ー ̄) 2chが潰れたら終わりですけどね( ̄ 3 ̄) 206・大理石 ◆.XVJTPPG0Q きのこ料理の大好きなハマのだいまじんですぅ( ̄ー ̄) 207・アダム ◆orzU/XvOmY アダム ◆OQj/i4CRHU 吉永さん家のキメラさんですぅ( ̄ー ̄) ドジっ娘なのがチャームポイントですね。 208・花京院 ◆G.Jo4hrQXg あ…ありのまま 今 したことを言うぜ! 『 トリップ付けた 』 209・一番星 ◆Momosan9tk 羽柴筑前守 ◆Momosan9tk みぃーつけたですぅ( ̄ー ̄) クラウンズにいる羽柴さんとは別人。 210・島津義弘 ◆/VJxsUn3ao 言わずと知れた薩摩の英雄ですぅ。 殿さぁは元気してるですかね・・・? 無類の焼酎好きで、『海童』が大のお気に入りらしい。 211・有馬豊氏 ◆vUV/BCDyjk 有馬豊氏のオールナイトニッポン! 212・水銀娘 ◆8xS.Ceq/xk 水銀燈の忘れ形見ですかね?あいつのローザミスティカから分裂した 新しい姉妹ですぅ。あいつが帰ってくるまでゆっくりしていくといいです。 そういえば息子の野郎になぜか母親呼ばわりされたことがあるですね・・・ 213・遊星主 ◆xoQ2cD4lY6 あっちも寂しくなったですね。たまにはみんなで遊びに来いですぅ。 214・園田くるみ ◆QUEENXka.k 記念かきこ。今度はゆっくりくるみんの話を聞かせてほしいですよ。 215・ラプラス・今泉(ハゲ) ◆Y1QNxxTTOQ 今泉君、お茶。ですぅ( ̄ー ̄) 216・まー坊 ◆DNrqkKjIN2 昔知り合いにマーボxという人間がいたですね これからも末永いご愛顧をよろですぅ 217・はぐれこばるといおん ◆cobaltUyP2 これであとスライムがいれば… 218・くれないっ子 ◆Rose/FNXqw 私の大事な姉妹。 219・水銀燈 ◆O2lZcCXc4Y なな板の雛苺スレの水銀燈。相方に薔薇氷晶というドールがいる。 話したかったですよ。 220・西田摩耶 ◆vfEUSQI7bE ル・ピュイ白金台の営業マネージャーらしいです。 ル・ピュイ白金台ってなんですかね?(; ̄ー ̄) 221・白洲テツオ ◆vUV/BCDyjk 知らない人間が多いと思うですが、その昔鉄男という映画があったです。 おっちょこちょいなところが可愛いですね。 222・教祖 ◆KYOSoHt5Vk どこの教祖なのか聞きそびれたですよ(; ̄ 3 ̄) 223・運命の輪 ◆wheelAw8Lc おいらロビーの夏実スレの住人。それが運命( ̄ー ̄) 224・水銀燈 ◆nvplZia.aw どこから来たんですかね?最近姉妹とも疎遠ですから嬉しかったですのに。 225・好感 ◆hwnkoUKANM おいらロビーの夏実スレ住人。ハオちゃん。 かぁいいので私は好きです。 226・からけ ◆774NGyYI.I 夏実板最近行ってないですねぇ。疎遠になりがちなとこ全部行くですかね。 空の軌跡はPSPでFCが近々出るという話ですよ。 おいらロビーの夏実スレ住人。 227・ルイズ ◆MG2rt5gDiQ ゼロの使い魔のメインヒロインです。申し訳なかったですね。 見過ごしていたですよ(; ̄ 3 ̄) 228・あん ◆GZS9KVH.BU 恋愛サロンの徒然なるままに雑記スレの住人です。 アンとは別人ですからあしからずですぅ( ̄ー ̄) とある人物と知り合いみたいですが…。 229・槐 ◆EDWARDLETM ほのぼの板のばらしーの生みの親ですぅ。 230・マグロ ◆fish.4z77I マグロの精らしいですぅ。愛称はまーりゃんですぅ( ̄ー ̄) 231・蒼星石 ◆ALICE.FRTA 蒼星石また来てくれるですかね…? 232・羽田サブロウ ◆toriQNaDT2 兎の息子と共演させたいですね是非( ̄ 3 ̄) 233・真紅っく ◆R8D9Mm3Lfg 行く所がないのでしたらうちで修行がてらわいわい暮らさないですか? 234・◆F15Jx5LW3. ◆F16EFqf0Ns なな板の雛苺親衛隊の一人ですぅ。 235・門倉真希央 ◆REDFXmSiYg 苦労人ですぅ。私には痛いほどよく解るですよ( ̄ 3 ̄) 困ったらどんどん頼るですよお互いさまですぅ。 236・☆真紅っくWithくれないの蒼星石☆ ◆ZnBI2EKkq. 宣伝乙かれーですぅ( ̄ー ̄) お互い頑張るですよ。疲れたときは気晴らしにくるですよ。 237・雪華綺晶 ◆Wind684vYo 言わずと知れた薔薇乙女の第7ドール。 私の大事な姉妹ですぅ( ̄ー ̄) 238・金浣腸 ◆KAnChorKfA ただの変態ですぅ( ̄ー ̄) 人の気を引きたいのならもっと違う方法にするですよ 239・真紅 ◆Rozen.h4N2 もはやどこからやってきたかもわからない真紅ですぅσ; ̄ー ̄) 240・紫亜 ◆Shia/5bffA ぴたてんの登場人物ですぅ。お久しのキャラさんですね。 それきりですけどσ; ̄ー ̄) 241・火鳥勇太郎 ◆oQBRAVEOew 太陽の勇者ファイバードの主人公ですぅ。 時折的外れな発言をすることもあるようですが、非常に頭がいいらしいですね( ̄ ヮ ̄)b 242・藤堂志摩子 ◆.JEW2ZlAyE マリア様がみてるの登場人物ですぅσ; ̄ヮ ̄) 243・真紅 ◆p3zPcqJFDE 翠星石 ◆p3zPcqJFDE 真紅祭りの会場ですかここはσ; ̄ー ̄) 他の姉妹はどうしたんですかねぇ蒼星石… 244・パプティマス=シロッコ ◆keRSEcFZmw ゚プ←が顔に見えた事は内緒ですぅ( ̄ー ̄) 機動戦士Zガンダムの登場人物ですぅ。 245・金糸雀 ◆9ExoXnEN/E 久々に増えた私の姉妹ですぅ( ̄ヮ ̄) これからもよろですよ。 246・ピッコロ ◆z81gXHd6h. 私と考えが180度違うにこにこ島の住人ですぅ。 ぴっころさんとユカイな仲間たちスレのスレ主ですね。 247・◆cafe/gOZx6 …? 248・ノウェ ◆w8INZEgVMs ドラッグオンドラグーンの主人公らしいですぅ。 あまりの作品の知名度の低さに嘆いてるですから宣伝よろですよ ( ̄ ヮ ̄)ノ 249・雛苺 ◆ZbzPOyJ7TY モテない男性板の【ローゼンメイデン】降臨薔薇乙女21スレの 姉妹ですぅ。いわずとしれた第六ドールですね。 250・ガイドMk1 ◆saZByGv7M6 全国寿司くいだおれツアーのベテランガイドさんですぅ( ̄ー ̄) 251・ガイドMark2 ◆VpyZ56Pbws 新人研修中のガイドさんですぅ( ̄ー ̄) 252・◆hViPPERrow またくるですよ( ̄ ヮ ̄)ノ 253・奈々子 ◆nanaWgRNJk いつの間にか看板娘が増えてたですぅ( ̄ ヮ ̄)ノ 末永くよろしこですよ( ̄ー ̄)b 254・◆kXRY21R89U ハルヒスレのゆっきーです。あまり話せなかったですが、また来てほしいですね(´・ω・`) 255・◆hViPPERrow ____ __,,/ _, ----`ヽ :. :. / _ ___ 、\ / / i \ \\ :. :. ,'./ i ヽ . ヽ . .. ヽ.ヽ ,'/ / .ハ ヽ ヽ . . . . ヽ .. ヽヽ :. :. |i .i i .i / ヽ ト 、 \、 . . . ', .', . .lヽ |i .i l N_, -弋 \弌弋ナ ] . l :. |i∧ ', { ,ィjモト \ イjミトイイV :. な… .| メヽ.', `ozZ] izN。ハ なんなんですか? :. | ヾ_! ゝ "゙゙ ' `゙ ハ. ', :. ここ、どこですか? | . _イ . .ヽ. (二フ , イ . . ! .ヽ VIPから :. / rィイ | . .ヽ >r/`<ノ . . .ト、; \:. きたんですお… / ∧l;l ! . . . //[二 ̄ l .. .. リ//ハ. \ :. / .[. ',ヾ、ヽi . . .l /(^` |. . . .// .] . ヽ.:. / / ) ヽ ヾ、ヽ .ハ ヤ{ ∧/.-‐'" | . . i ', ./ .,イ . ..] \ヾレ'ハ ∧__ノノハヾ、 l . . .ハ ', l /| . . ハ i Y [ヾ`Yヽニン'ノ] ] / . . / l .l V | . . / . |_,ィ' ̄ ヽ三[ `ー-ノ イ / . i. リ ヽ . [、. .V ヘ { / . ∧| ヽ! )人 人 / \! :. " ヽ /イ{ .ノ .\ :. :. \__/// \______/ ヽ / // |;| i __ ', :. / 、 {;{ |;| . i/. | 256・ガイドMk1 ◆saZByGv7M6 vipからきた漫才師の片割れ。 257・ガイドMark2 ◆VpyZ56Pbws 未来レスが売りの漫才師の片割れ。 258・Сейлор Мун ◆TGMoXBDxXg 謎のロシアンセーラー戦死。 Я репрессирую вас вместо луны!! 259・味皇 ◆SzGPck6bI. テルミドール ◆SzGPck6bI. デ軒ことデストロイ軒の常連。世界中の料理を食べつくしたと言う どこかのアンソニーも舌を巻いて逃げ出す『下またリナ』の異名を持つとか持たないとか。 260・◆/a4Y2eHwxg r'⌒`ヽ ____ ジャー ,' ((ヾ、ヽ〉 /__ o、 |、 〉( ゚∀Y i ノ .ii | ・ \ノ ( o 旦| ・ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ポットはZOJIRUSIですよね? 261・翠星石 ◆bS4mgL0ndY しらねえうちに私が増えてやがったですぅ!( ̄ー ̄) 262・シド ◆q1xbOhkhzw シド、四度、示度、四℃、式... そうです!両儀式だったんですぅ!!!( ̄ー ̄)9m 263・薔薇水晶 ◆1xY0cYRBl6 薔薇水晶 ◆Qpup5HLfZw 水銀燈 ◆Qpup5HLfZw 蒼☆石 ◆Qpup5HLfZw 水銀燈 ◆lFK9qG1Nks ベホイミ ◆lFK9qG1Nks 一条 ◆lFK9qG1Nks 芹沢 ◆lFK9qG1Nks 片桐姫子 ◆lFK9qG1Nks 麗 ◆lFK9qG1Nks 麗もどき ◆lFK9qG1Nks 一条 ◆fPO/.0BBOQ 水銀燈 ◆fPO/.0BBOQ キバヤシ◆fPO/.0BBOQ 水銀燈、お前もいろいろ苦労してたんですねえ....(しみじみ) 喪板の主ですぅ。とても思慮深くて私がとても信頼しているドールの一人ですぅ。 264・坂井鉄也 ◆8SzUMgUAgU 坂井?ゆーじなら知ってるですが... -―――- 、 / 丶__ノ / ヽ / / . { ヘ ヽ 丶 ', ,イ"/ // | ヾ 、 ..ヽ ハ l 〃l l l ト、 ∧ ! \,ヽィ l ハ |. {! | l | N.\ハ lメ´_ヽ\! ! | | lヘl ∧代ヽ\|!イ才丁ル、 | | ヽリヽ ハ V;j V_;ソ / ∧| | にゃに、見てんのよ! Y ゝ" _ " / / ´ | ! l ゆーじ、お茶淹れて頂戴。 ! { >`.'_, .ィ≠‐┐ l l! | ,ゝ;枡#で /ヽヽ ヾリ l! | {;;#(7^ヽヘ/ ヽ L_」 l! | ゝ_;>く 〃 /`  ̄¨l l! | ヽr-イ | .l! | ー―‐ァ-‐――-r‐ ー‐| 入____j l! |ー―‐ヘ⌒ゝ-―― 265・山守義雄 ◆qQw284Co5w 義に篤いやろうだと思うですよたぶん。 名前だけ( ̄ー ̄)9m 266・槇原政吉 ◆/r.T30yGps つーかお前らどこから来たんですか(´・ω・`) 267・聖猫乙女 ◆tr.t4dJfuU いろいろあったですね。まあ達者でくらすですよ。 268・黄色い嫌な奴 ◆6gln9CE36Q ケ〇ンの黄色いヤツといえばヤツしかいねえですぅ。 …誰だっけ? 269・ととのえ老臣 ◆9wyZyL8qrQ 『にえとの』に見えたのは内緒ですぅ。 270・ニコ ◆xx7xR270.I \ / ┌‐────┐ | | ̄ ̄ ̄ || | | ・ ゚ ! | | |__∠ヽ_|| └‐u──‐u‐┘ 271・ロ ◆wY.xMdV1vk ロリ ◆wY.xMdV1vk ◆wY.xMdV1vk オカルト板からやってきたょぅι゛ょですぅ。 誰かを常に呪ってます。 272・◆304YnOGouM 失踪 273・雛苺 ◆SQbNeapBjk ほのぼの板からやってきた第6ドールですぅ。 274・白雪 ◆GsTIoLLKCg ゲームばかりで正直ごめんですぅσ; ̄ー ̄) 275・妖怪さん ◆yokaiiiEL. 玲ちゃん ◆yokaiiiEL. 怖くない妖怪さんがよく見る板はおいロビとアニメ2板、卓ゲ板。最近TRPGとボードゲームしているそうです。お気に入りは東方系AAのイメージですけれど、実は割とバラバラ。以前女将さんとネトゲしたことも。けっこうお酒が好きみたい。飲も飲もーw(桜) 276・ロリーちゃん ◆vpLorieOQE カロリーメイトのロリーちゃん。心に残る関西弁が印象的です。(桜) 277・蛎崎家次男 ◆A/jwt/fEIw 甲斐源氏の庶流ってことは祖は清和源氏ですか。 殿下といい、いろいろな血筋の人間が来るですね。 278・武田晴信 ◆zxNj9QFa2w 上記の親戚筋に当たる。父親を追い出して家督を奪った。 東海道の真ん中に居座り、機嫌が悪いと東海道新幹線を止める迷惑な人物?( ゚д゚)。 279・^^DQN^^ ◆DQNq1gPgWI そのトリップすげーですね。 280・サキチ ◆N.dsW2.6BQ おいらロビーの「我が名は、サ・キ.チ」スレのスレ主の企業戦士さん。(桜) 281・レイ ◆UMlmxyB19Q オカルト板から愛を込めてありがとうですぅ。 282・◆9071/2s/BQ くれナギ ◆9071/2s/BQ 紅真九朗 ◆9071/2s/BQ お名前(9071)の読みかたは・・ひらがな3文字で『くない』、呼ぶときは『くないちゃん』(寿司屋のSOS団長、高町なのはちゃんが名づけ親)。スレの流れに合わせて、アニメ関係のとっても素敵な自作コラージュや、アニメの面白いシーンの動画や画像をupしてくれます。女将さんとネトゲのお友達という未確認情報も。(桜) 283・水銀燈 ◆IRu/Dm/5Mc なりきりネタなんでもあり板からやってきた人気者ですぅ。 284・蒼星石 ◆ALICE..Ozw 上記と同じくなな板出身の…ってアリスですか!( ゚д゚)σ)´Д`)プニプニ 285・◆Alice.z.DY 蒼星石の進化系…なんてことはないですね(´・ω・`)y━~ 286・白牡丹 ◆Enju.swKJU 地獄少女閻魔あいちゃんのAAで登場。寿司屋のお友達スレ(史料館参照)新シャア板「デ軒」の店員さん。戦国大名からアニメキャラまで他スレ、他板での活躍も多彩。紅茶、中国茶に精通、コテ名の白牡丹は中国茶の銘柄から(桜) 287・パンジャ ◆QLelOncjKw がう~(この方の詳細は不明でっす)(桜) 288・白黒 ◆KmtyT07rOg 白黒団の白黒ちゃんとは別の方みたいです。(桜) 289・卜━ノレ・K-nig ◆knigsJ2vvw ≧ヘ!|イ -゚ノゞ ◆HarecOiys2 ミdリ ゚∀|lレ ◆HarecOiys2 本田透 ◆ToruTWXWKE ケータイK-nig ◆JA22BE058E 霧雨 ◆DazebmoAkQ ことみ ◆NotoRoRfGk Hong-Rong ◆kangwPIB0w Hong-Rock ◆kangwPIB0w ≧ヘ!|イ -゚ノゞ ・・機動戦士 ガンダム00 のアレルヤ・ハプティズム。卜━ノレ・K-nig ・・新シャア板のAAスレッド「シンきたスレ」の騎士で新シャア板「デ軒」の軍師さん。楽しくて親切な方、AAマエストロ。(桜) 290・黒ちぃ ◆SgID0C0t1Q 黒ちぃ ◆a52Bm3kOlA 2000年9月から2002年10月まで「週刊ヤングマガジン」に掲載された「ちょびっツ」のちぃ。美少女型パソコン。どうして黒ちぃなのかな?(桜) _ _l\ ヾ、'´ `ヽ 7b!リノノリ))》 /ノヘ.!i!^ヮ゚ノ|ヽ /ノ くノ猫ヾトヾ、 rクノt-‐/ノ入ヽ ソ〉 `~~`-tッァ-´ 桃宮いちご ◆SgID0C0t1Q 桃宮いちご ◆BZ9EHJYO96 桃宮いちご ◆BbcfBNbQ6. 寿司屋の未来にご奉仕するにゃん ト、 _r-、,r-、,r-、_ lヽ `ーァ'` `'-,--一'フ! l ヽ,r' /⌒ヽ、/⌒ヽ `ー,/ / 〉 ゝ'/, , 、 \ 'ゥ / /ヾr' / l / ,イ ] !] ヽ )く // 〉' ム-l‐-/ l /l-‐ト|、 ヽr'Xヽ 〃! l / /,;==、 レ' ィ==、レハ l l ト! [! ヽlハ lイ '"l_ノ i' l_ノ i゙'ト、ハ/lノリ ヾ!ヽ,ハ ヽ''シ ヽ''シ ハ レ' ヽ|,ゝ\ l ̄l /フ|ノ r'ゝ、 |` ー ´| 、 _〈 フ /ー'|[ o ]|`ーヽ/ く_ ヽ/ \[ ` ̄´ ] / \ノ 、 / _r‐、 _r‐、\ ,. r 、__/ /ヽ \ \__ノノ_, ゝ / ̄/( ,)\ \ ニ] [彡 ノ / ( ) \ ヽヽ ̄´  ̄´/ / `ー( )‐' /\ 291・水銀燈(Mercury Lamp) ◆rRvx0vSxmc 電波・お花畑板からやって来た水銀燈ですぅ。 292・副店長 ◆dekenNZdYA 店長 ◆dekenNZdYA 新シャア板のスレッド「強化拉麺デストロイ軒Z」(通称デ軒)のスレ主、店長兼副店長さん。機動戦士ガンダムSEED DESTINYのステラ・ルーシェのAAで通常営業のほか、流れに合わせて翠星石AAの店長石などなど、多彩な変わり身を。AAマエストロのテクニックと同じく会話も楽しい方です(桜) 293・涼宮ハルヒ ◆r3HaRuHiIM 寿司屋をSOS団(埼玉SOSじゃない方)事務所に指定。Zazieさんのお友達みたいです(桜) 294・亞里亞 ◆eJG9ZF8X5I 「シスター・プリンセス」に登場する12人の妹のうちのひとり。(桜) 295・ところてんマン ◆KanTenCNao 寿司屋100スレ祝いのために、鋼鉄のおにいたまの依頼でラウンジ板にある「ようかんマン派遣依頼スレ」から派遣されてきた、ようかん社の社員さん。(桜) ■ __ 旦~~ ヽ(・‐・(ノ ) ) | | 296・リ*´∀`) ◆Fzzw30u/RU 機動戦士ガンダムSEEDのディアッカ・エルスマン。新シャア板の「デ軒」と「シンきたスレ」の常連さんで、ちょっぴりシャイなザフトの赤服(桜) 297・客 ◆kyakuFmlnA 台湾板移転初スレ103店目にやって来た通っぽい注文をするお客さん。昔のジェンキン寿司のお客さん?名無しのジェンキンスおじさんも現れて・・(桜) 298・こうた ◆H.O.M.O.O. どうやら一休さん(アニメ)のどちて坊やみたいです(桜) 299・c(・ω・c)))))) ◆....w.VIPQ イカさん、おいロビー時代に来店されたそうです。お帰りなさい(桜) 300・三宮 紫穂 ◆xchIldxCMk 絶対可憐チルドレンに登場する最高超度7のサイコメトラー(思念同調能力者)。アニメでは10歳ながら最高の悪女という噂も?(編集中 桜) 先頭へ戻る
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back/ 薔薇乙女も使い魔menu/ next ~アルビオン戦四日前 深夜 ガリア王都リュティス郊外、ヴェルサルテイル宮殿。薄桃色の小宮殿『プチ・トロワ』 では、ベッドに腰掛けた王女イザベラが訪問者を出迎えていた。 北花壇騎士として『トリステイン~アルビオン戦争が始まる前に、ヴァリエール家三女 ルイズの使い魔達をヴェルサルテイル宮殿へ連行せよ。殺してはならない』という命令を 受けたタバサは今、王女の目前でこれを達成した。 イザベラはジロジロと、天上から垂れ下がった分厚いカーテンをめくってきた来訪者を 観察した。 タバサは、ジュンと真紅と翠星石を、生きたままイザベラの部屋へ連れてきた。メガネ の少年、ジュンは剣もナイフも持っていない。代わりに右手に真紅、左手に翠星石を抱え ている。左手にはルーンを隠す包帯。左手薬指には、異様に大きな薔薇の指輪…外見上、 ただの子供。とても報告書にあるような剣士には見えない。 王女の部屋には東薔薇騎士団団員バッソ・カステルモールを筆頭に、東薔薇騎士団の精 鋭三名が王女の左右の壁際に控えている。先ほどまで、王女を寝間着に着替えさせようと していた侍女達も、既に待避。そして緞子の奥、部屋の入り口、窓の外にも、残りの東薔 薇騎士団員が音もなく展開し、潜んでいる。 さらには、上空には竜騎士が十数騎滞空している。プチ・トロワ宮殿周囲にも、何重に も渡ってヴェルサルテイル宮殿全体から集結した騎士達の包囲網が築かれていた。 そしてこの事実は、グラン・トロワの一番奥の部屋に暮らす長身美髯の美丈夫、ガリア 王ジョゼフにも伝えられた。その隣にかしずく王の愛人、庭園に咲き乱れる薔薇のように 美しい貴婦人、モリエール夫人は、顔面を蒼白にした。 「な・・・何と言う事でしょう!あの、恐るべきガーゴイル達が!この宮殿へ堂々と乗り 込んでくるなど、なんと大胆不敵な!!陛下、すぐに捕らえましょう!」 ガリア王は落ち着いて報告を、ジュン達の状況と包囲網の配置を聞いていく。そして小 姓と騎士達に次々と指示を飛ばす。 「・・・よし、その通りに配置せよ。 ヴェルサルテイル宮殿の全体図をここへ、一番大きなヤツだ。駒もだ、チェスのでも人 形でも何でもありったけ、ここへ…いや!天守だ!プチ・トロワが一番よく見渡せる部屋 へだ!ヤツらに関する報告書も、全て持ってこい!アルビオンの、ニューカッスルでの戦 闘記録も、全てだ!!」 そして、オロオロするモリエール夫人を従えて、ジョゼフは天守へ駆け出した。 天守からは、プチ・トロワ周囲のかがり火や部屋の光などが見える。その上空には竜の 影が幾つも舞っている。グラン・トロワ天守から見下ろすと、プチ・トロワを包囲する騎 士団がよく分かる。 窓から見渡すジョゼフの背後では、床にひかれた全体図の上に、小姓達がプチ・トロワ 内部と周辺に展開する騎士に合わせてチェスのナイト、ポーン、竜のオモチャなどを手際 よく並べていく。 端に移動された机の上には、運び込まれる報告書が山と積まれていく。 「へ、陛下…もっと騎士を送らなくてよろしいのですか?それに、王女も危険では…」 ハンカチで頬の汗を拭きながら、モリエール夫人がジョゼフの背に声をかけた。そして 振り返った王の眼は、まるで新しいオモチャを得た子供のように輝いていた。 「いや、まずはヤツらの話とやらを聞くのが先だ。それに、あの部屋や廊下の広さでは、 これ以上の人員を送ると、狭くて動けなくなるのだよ。同士討ちにもなるし、強力な魔法 を大量に撃ち合えば、城自体が崩れて全て灰燼に帰す。精鋭4名のみを室内に配置…これ が限界…いや、部屋の上下からさらに…」 ジョゼフは窓から離れ、運び込まれた大量の人形や駒を漁っていく。その口からは止め どなく言葉が溢れてくる。 「イザベラに会いたい、か。何か企んでいるな?捕らえるには、まず足を止めねば。土系 …いや、人形は飛べる。まずは少年を捕らえるか。武器が無いのは気になるな、こちらの 意図に気付いていないはずがない…隠し武器?だが小さなナイフ程度では、この包囲を破 れんぞ。人形だけで戦う気か?他にも何か、未知のアイテムを隠しているのやもしれん。 いっそ、あの少年は殺して、人形だけを…いやしかし、エルフとも異なる技の数々…面白 い。…まずはこのゲーム、ルールを知らねばならんな。ヤツらがいかなる駒か、ただの阿 呆なガキ共か、見極めねば。まずはやつらの出方を・・・それとも、いや、まずは・・・」 そして全体図上、イザベラの部屋に王自身の手で9つの駒が置かれた。青髪のお姫様の 陶器人形が二つ、緑と赤の少女の小さなぬいぐるみ、チェスのナイトが4つとポーン。 その他、大量の人形が所狭しと配置された全体図を前に、ガリア王はどっしりと椅子に 座った。 王の周囲には、多くのメイジ達が控え、ルーンを唱えている。風系魔法『遠見』を使っ て、イザベラの部屋とプチ・トロワ内部の状況を調べ、逐一報告しているのだ。そして小 姓達は、その報告に従って駒をどんどん移動させている。 さらには大鏡が、全体図を挟んでジョゼフの正面にドンと置かれた。鏡面にはジョゼフ ではなく、イザベラの室内が映っていた。『遠見の鏡』だ。 次々と来室する近衛隊隊長、騎士、大臣等が全体図を前に、様々な指示を飛ばす。 「ここの配置が近すぎる!もっと・・・」「・・・ての跳ね橋を上げろ。城門も閉・・・ 宮殿全体を封・・・」「・・・眠りの鐘を・・・外の騎士に持たせよ」「城外へ連・・・ 連隊を呼べ・・・宮殿外郭を包囲・・・」 プチ・トロワを見渡す天守は、今や即席の司令室だ。 「さて、布陣は整った。次はお前達のターンだ…トリステインの人形共よ、その力、見せ てもらうぞ!余を楽しませよ!!」 魔法のライトでおでこを光らす王女イザベラの前には、ひざまづくジュンがいた。その 右に真紅、左に翠星石、二人もひざまづいている。その後ろではタバサが、やはり無表情 で立っていた。 椅子に腰掛け、手にワイングラスを持つイザベラ。その横にカステルモール、さらに王 女の左右の壁には、3人の騎士が直立不動で立っている。 室内には豪奢なベッド、年代物の小さく愛らしい机、椅子、全身をうつせる大きな鏡、 天上から下がるきらびやかな照明、etc...。部屋の入り口のカーテンすらも含め、魔法大国 ガリアの王女として相応しい絢爛豪華な部屋だった。 タバサが、ぼそっと呟いた。 「任務完了」 あまりに普通に言うタバサに、イザベラはキョトンとした。 「ちょ、ちょいとお待ちよ・・・あんた、どうやってこいつらを連れてきたんだい?」 「シルフィードで」 「…あたしをおちょくってるんだろ?なんでこいつ等が、あたしに会いに来るなんて話に なったのかって聞いてんのさ!」 「僕がタバサさんにお願いしたのです」 口を挟んだのは、頭を垂れたままのジュンだ。 「王女イザベラ様におかれましては、ご機嫌麗しゅう」 「平民風情が!許しもなく口を開くとは何事かっ!」 ジュンの頭に、イザベラが手にもっていたワインがぶちまけられた。だがジュンは顔色 一つ変えず、頭を伏せたままだ。人形達も微動だにしない。 「ふんっ!まぁいい。平民、話すがよい」 「光栄至極」 ジュンは、したたるワインを拭こうともせず、まるで何度も練習したかのような流ちょ うさで話しだした。 「実は、レコン・キスタとの戦争について、我が主もトリステインの敗北は必至と案じて おられるのです。他国の援軍を得ようにも、ロマリアは遙かガリアの南の国。ゲルマニア は、我らのせいで国交断絶のありさま」 「あぁ~あ、聞いてるよぉ。あんたらがアルビオンのバカ王子をかっさらって来たせいな んだってねぇ?」 イザベラはニヤニヤと下品に笑いながら、ジュンを見下ろしている。 「はい、これも僕の浅慮ゆえ、弁解のしようもありません。そこでどうにかガリアの援軍 を得て、この祖国存亡の危機を乗り越え、主の名誉も回復させようと、思案しておりまし た」 「はぁ~ん?・・・ああ、もしかしてえ」 イザベラは、わざとらしく顎に手を当てて考え込む振りをする。 「ガリアからの留学生の、そこのガーゴイルに声をかけた…そういうワケかい?」 「ご明察にございます。聞けば、タバサ殿はガリアの王族に知人がおり、謁見の席を設け てくださるとのこと。これは渡りに船と、こうしてまいった次第です。それがよもや、王 女様とは、これも始祖ブリミルのご加護かと」 「ああ、なるほどねぇ・・・」 イザベラはチラッとタバサを見る。相変わらず、その瞳は冷たく、何の感情も読み取れ ない。 そして部屋に入ってきた時と同じく、ぼそっとつぶやいた。 「終わったから、帰る」 一瞬キョトンとしたイザベラは、くるりと背を向けたタバサを引き留めようとした。だ が、任務を完全に達成しているため、引き留める理由がどこにも無い事に気が付いた。 「ちっ・・・なんて運の良いヤツだろうねぇ、まったく。まぁ、いいわ」 イザベラのセリフを最後まで聞く事もなく、タバサはさっさと出て行った。そして窓か らは、飛び去るシルフィードの影が、闇夜の中に消えていくのが見えた。 忌々しげにタバサを見送ったイザベラは、ふんっと鼻で笑いながらジュン達を見下す。 「さてと、話を戻そうかねぇ・・・要は、トリステインを助けて欲しい、てわけだね?」 「御意」 「さぁってぇ・・・どうしようかしら、ねぇ?」 イザベラは悠々と空のグラスを持ちなおす。カステルモールがうやうやしくワインをつ いた。そのままジュンの前まで歩いてきて、クイッとワインを飲み干し、ぶふぁ~と酒臭 い息を、ジュンに吹きかける。 「まぁねぇ・・・別にあんた達を父様に取り次ぐくらい、大した手間じゃあ…ないんだけ どねぇ?」 ジュンも人形達も頭を垂れたまま、黙ってイザベラの次の言葉を待つ。 「んなことして、あたしが何の得をするのかねぇ?言ってご覧よ」 「無論、トリステイン王家よりガリア王へ相応の礼が」 「違う違う、あ・た・し・が!何の得をするのかって聞いているのさ!」 イザベラは、優越感に顔が緩みっぱなしだ。ハルケギニア全土が注目する魔法兵器が、 自分の足下でしおらしく跪いている。なかなかの剣の達人と聞く所有者の少年も、ガリア の援軍欲しさに頭を下げに来たのだから。 「さすれば、僕が持つ東方の技を捧げましょう」 「ほほう?そりゃ、どんなのだい?」 イザベラの口の端が醜く歪む。 「例えば、これにございます」 そういってジュンが服のポケットに手を入れた。その瞬間、騎士全員が杖を引き抜き構 える。 ポケットに手を入れたまま、ジュンの動きが止まる。 「ご安心を。武器でも危険物でもありません」 ゆっくりとジュンが取り出したのは、懐中時計。以前ジュンが蒼星石の元契約者である 時計職人の老人、柴崎氏の時計屋で受け取ったモノだ。 イザベラは拍子抜けしたように、肩を落とした。 「なんだいそりゃ?時計なんて持ってるよ」 「はい、ただの時計です。ですが、これは僕の故郷で作られた時計です。ハルケギニアの モノとは、材質も構造も全く異なる、珍品でございます。・・・ついでに示す時間も異な るのが困りものですが」 「意味ねーだろ!」 「はい、時計そのものとしては役に立ちません。ですが、これを調べあげれば、ここガリ アの工業は更に発展することでしょう。また、東方産の珍品として部屋の隅に飾るも一興 かと存じます」 「ふーん・・・だが、これじゃあ全然足らないねぇ」 「無論。それはただのご挨拶の品にございます。お納め下されば幸い」 イザベラは受け取った時計をパカッと開けた。確かに中は時計だ。ただし、見た事もな い金属の上に、見た事もない文字が刻印されている。金属以外の、正体不明な素材もいく つか見える。 「ま、これはこれでもらっとくよ」 懐中時計を騎士の一人に手渡す。騎士はすぐに外へ行き、他の者に時計を手渡して戻っ てきた。 「確かに、あんたの持ってる東方の技は魅力だ。エルフとも全く異なる、未知の技…興味 あるねぇ」 「さすれば、是非ガリア王へお取り次ぎ願いたく」 「だがっ!あんたが持ってる、東方の別のアイテムを渡してくれたら…だねぇ」 「…それは、即ち、何でありましょうか?」 ジュンは礼儀正しく、だが、どうみても棒読みのセリフで尋ねてきた。そしてイザベラ も、さも当然という風に言い放った。 「あんたの左右にいるガーゴイルさ!そいつを渡してくれれば、父様に取り次いでやろう じゃないの!」 腕組みするイザベラは、不適に笑いながらジュンを見下ろす。 ジュンは、左右の真紅と翠星石も、何の反応もせずひざまずき続ける。 沈黙が流れる 「さぁ、どうすんだいっ!?」 イザベラが杖を引き抜き、ジュンに向ける。 だが3人とも怯むでもなく、全くの平静だ。 「いきなり、人形達ですか。・・・杖まで抜くとは、少々性急ではありませんか?」 「あいにく、夜更かしはお肌の大敵なんでね。下賤な平民の相手なんぞさっさと終わらせ て、早く寝たいのさ」 「これはこれは。気付きませんで、お恥ずかしい」 「やかましいっ!さぁ返答は!?」 「できませぬ」 顔を伏せたまま、さも当然のように答えた。 イザベラも、予想通りという感じで笑い出した。 「おほ!おほほっ!おほおほ!!おっほっほっほっほー!」 イザベラは高笑いをしながら、杖でジュンの後頭部をぐりぐりとつく。 「いいのかぁい?そんなこと言って、主の名誉はどうすんだぁい?」 「援軍の確約を得たならともかく、ただお目通り願うだけでは、割に合いませぬ」 「はっ!平民風情が、王族と口をきけただけで有難いと思いな!」 「では、残念ながら、話はこれまでという事に」 「ああ、そうだねぇ・・・話は、これまでだね!お前達、こいつ等を捕らえな!!」 イザベラが命じるが早いか、部屋の全ての入り口から騎士達が飛び込んできた。 杖を構え、ジュン達を完全包囲する。 だが、それでもジュン達は頭を下げたまま、ひざまずいていた。逃げようとするどころ か、慌てもしないジュン達に、さすがに居並ぶ騎士達もイザベラも訝しむ。 「あ~ん?どうしたんだい、何の抵抗もせずとっつかまるつもりかい?」 やっぱり顔を伏せたまま、ジュンが答えた。 「このような無体をされては困ります。我らに何の非がありましたか?」 「はぁ?何言ってンだい。あんたは平民だ、それで十分だね!・・・ああ、そういえば、 こんな深夜に押しかけてきて、あたしの眠りを妨げたねぇ。うん、こりゃ死に値する」 おほほほほーっと下品な高笑いでジュンを小馬鹿にする。 「深夜のお目通りをお許し下さったのは、イザベラ様ご自身にございますが?」 それでもジュンの言葉は、全く冷静だ。 全く動揺も恐怖も見せないジュン達に、イザベラはだんだん不愉快になり始めた。 ごすっ! イザベラの靴が、ジュンの後頭部を思いっきり踏みつけた。 「気に入らないね、その態度!平民風情が!このイザベラ様をバカにしてるのかい!?」 ごすごすっ! さらに思いっきり踏みつけるイザベラだが、それでもジュンは怒ろうともしない。人形 達も、未だに顔を伏せている。 「イザベラ様・・・僕がミス・ヴァリエールの使い魔ということは、ご存じですね?」 踏まれながらも、ジュンは尋ねてくる。 「はん、そんな事は知ってるよ!それがどうしたい?」 「使い魔は主の目となるもの・・・僕を非も無しに捕縛すれば、それは即座にヴァリエー ル家への」 「おほほほほーっ!!何を言うかと思えば!もうすぐ消えちまう国のことなんか、知らな いね!」 「では、どうあっても我らを捕らえ、研究材料にでもすると?我らは主の下へ帰らねばな りませんが」 「まぁさぁかぁ、無事に帰してもらえると、本気で思ってたのかぁい? ああ、ここでとっつかまった方があんた達のためカモよ?なんせ、アルビオンとトリス テインが散々やりあって、どっちもボロボロになったところでガリアがぜーんぶ頂いちま うんだからね!」 「なるほど、ガリアは漁夫の利を得ますか」 「そーゆーことさ!んでもって、あんたらも当然ガリアがいただき!つまり、あんたらは ガリアに来るのがちょっと早くなるだけなのさ!!」 「その際、我が主は?」 「はぁ?あんたの主ぃ?もし生き残っていたら、改めて縛り首かねぇ」 「そして、もうすぐトリステインは滅ぶので、これらの話が全て我が主に、そして女王陛 下へ伝わっても構わぬ、と?」 「そおのとおーりぃっ!おっほっほっほっほ!おーっほほほおおほおっほほほっ!!」 イザベラは、ジュンの頭をごすごすと踏みつけながら、高笑いをし続けた。周囲の騎士 達も勝利を確信し、その光景を見続けた。 さらにはグラン・トロワ天守にいるほとんどの者が、遠見の鏡を見ていた。噂の魔法兵 器を手にする瞬間を、今か今かと待ちわびていた。「所詮は平民の子供、愚かな事よ」と あざけり笑っている。 だが、ジョゼフ王だけは、あまりに無抵抗で、危地にも関わらず冷静すぎる彼等に、疑 念を強めていた。 いずれにせよ、彼等は気付かなかった。王女の部屋の輝く照明の中に、小さな二つの光 が混じっていた事を。いや、例えジュン達がいなくても、もともとキラキラと輝いてる照 明の光に、ほんの小さな小さな光が、ジュン達が来るずっと前から、二つだけ増えている 事など、気付くハズがない。 そして、その二つの光は光量を増し、赤と緑の光が、音もなく垂直に落下した――イザ ベラの目の前に、顔を伏せるジュン達の真上に、包囲する騎士達の真ん中に。そして、遠 見の鏡にも、それは映っていた。 カッ! 「うぉっ!?」「な!」「何だぁ!?」「め、眼がぁ!!」「し、しまったぁ!!」「え!エ ア・ハン」「撃つなぁ!味方に当たる!!」 それは、刹那の出来事。恐らくは、1秒にも満たない。それら全てが同時に起こったと 言って良い。 二つの光がいきなり目の前に現れ、一瞬ほとんどの視線がそれらに向いた。室内で光を 見ていなかったのは、顔を伏せていたジュン達だけ。 皆の視線が光に向いた瞬間、ジュンの指輪が光り出す。右手は胸元の、ネックレスにつ けた小さなメリケンサックに触れた。ルーンが発動し、指輪の光がさらに強まる。 光玉が、太陽の如く輝いた。 薔薇乙女の体からも光があふれ出す。紅い光を放つ真紅の両手から、まるで破裂した水 道管のように薔薇の花びらが吹き出している。 ひざまずいていた3人は、一気に飛んだ。ジュンの頭に足を乗せていたままだったイザ ベラは、まるで安物の人形のように跳ね飛ばされ、クルクルと宙を舞う。 3人は、包囲する騎士達の頭上を飛び越えた。出口に向かって――入ってきた部屋の入 り口ではなく部屋の奥へ。イザベラが着替えに毎日使っているのであろう、大鏡へ。 3人がイザベラの大鏡からnのフィールドへ突入する瞬間は、誰にも見られなかった。 室内にいた全ての人間は、ホーリエとスィドリームの光に目をくらまされていた。また、 グラン・トロワ天守にいるほとんどの者も、鏡を通して光を直接見てしまった。『遠見』 を使用していたメイジ達までも、視力を一時奪われた。 光を直接見なかったのは、ごく少数。伝令に走っていた下級士官や、周囲に控える小姓 達。そして、ニューカッスルでの戦闘記録から、人形達が操る光玉は目くらましを使う、 と知っていたため即座に目を伏せたジョゼフ王だ。 すぐ鏡へ視線を戻したジョゼフ王も、ジュン達がどこへいったのか分からなかった。大 鏡には、既に彼等の姿は映っていなかった。見えたのは、イザベラの部屋にみっちりと詰 まった薔薇の花びらで、真っ赤になった鏡のみ。 王女イザベラの部屋では、全ての扉・穴などから、薔薇の花びらが溢れだしていた。 中にいた騎士達と王女は、むせかえるような薔薇の香りの中、真っ赤なプールで溺れて いる。 プチ・トロワ内部に居たが、王女の部屋に入らなかった騎士、及びプチ・トロワ周囲に 待機していた騎士達が、大慌てで王女の部屋から薔薇を取り出していく。窓を破り、壁を 魔法で打ち抜き、ようやくイザベラ含め、全員の救出に成功した。 「ぶふあぁっ!!じ、死ぬかとおぼったっ! ・・・あ、ああ、あいつらあああああ!!!!、?・・・?なんだ、これ?」 騎士に助け出され、怒りに我を忘れたイザベラだったが、自分の額に何か、紙が貼り付 けてあるのに気が付いた。 ひょいと紙をはがし、その紙片を見ると、そこにはヘッタクソな文字で一文が書き殴っ てあった。 [やーいやーいデコパッチ、オデコまぶしくて顔あげれねーっての] プチ・トロワに王女の雄叫びがこだました。 別名『薔薇園』とも呼ばれる、季節の花々が咲き乱れるヴェルサルテイル宮殿。森を切 り開いて建設された宮殿には、壮麗で広大な庭園の中に無数の花壇、森、泉、東屋、そし て庭師達が使う倉庫なども存在している。 その中の一つ、庭園のはずれにある古い倉庫の中、忘れられたように置いてある大きな 鏡が輝き出す。鏡からはジュンと真紅と翠星石は飛び出した。そして、彼等を出迎えたの は赤髪褐色の女、キュルケだ。 「はぁ~い、ジュンちゃぁ~ん。どうやら、上手く行ったようねぇ?」 「こっちはオッケーですよ。他の人はどう?」 「大丈夫よ、全員配置に付いたわ。うっふふふふ~!なんせあんた達のおかげで、警備が ぜーんぶプチ・トロワにいっちゃったんだもの!動きやすくてしょうがないわぁ」 「それじゃぁチチオバケさん、トランシーバーくぅださいですぅ」 「あ、あのねスイちゃん…そのチチオバケって、やめてよね」 微妙な笑顔と共に、キュルケが3人にトランシーバーを配る。ジュンはインカムを着け るが、真紅と翠星石は体のサイズが合わないので、トランシーバーにヒモを付けて、肩か らさげる。 真紅がトランシーバーに口を近づけた。 「あーあー、聞こえる?みんな、準備はいい?」 『いいわよぉ、いつでも始めなさぁい』 「へへへへ!おでれーたなぁ。すげえぞ姐さん、もう宮殿中が大騒ぎだぜっ!」 水銀燈は、グラン・トロワにいた。グラン・トロワ天守の屋根の上で、白銀の長い髪を 自らの黒い羽で覆い隠し、黒いドレスと共に闇へ溶け込んでいる。足下でジョゼフ王が指 示を飛ばしている声を、傍らに持つデルフリンガーが彼女に通訳している。 さらに、黒く塗られた皮布に包まれたデルフリンガーが、水銀燈が肩からさげるトラン シーバーから、指示の内容を皆に伝えていた。 『うふふふ・・・なぁんておばかさん達なのかしらぁ。ジュンはちゃあんと話してたじゃ ないの、ローゼンメイデンは全部で7体だってぇ。 他のドールが来るって、どうして気が付かないのかしらねぇ?』 「ははっ、『東方から』かい?そいつぁ無理な話だろうよ!」 『自らは貴族・王族であり、選ばれし民であり、愚かで無力な平民達を支配する存在で ある』 そう信じて疑わないガリア王宮のメイジ達の上では、人形と剣が愚かで傲慢な人間共を 笑っていた。 ヴェルサルテイル宮殿の厩舎、その一つに小さな人影があった。子供ほど大きさの人影 は、全身を黒いローブで覆っている。 厩舎には多くの馬・グリフォン・マンティコアなどが眠っている。警備の人員は、ほと んどがプチ・トロワ包囲網に参加してしまい、ごく数人しかいない。ましてや子供ほどの 大きさしかない黒い影など、発見のしようもない。 ローブの子供が、小さなヴァイオリンを取り出す。 『うっふっふっふ・・・薔薇乙女一の頭脳派、この金糸雀が、悪人共をこらしめてあげる のかしら!』 トランシーバーから、全員の準備が整った事が東屋へ告げられた。東屋にいるのはジュ ンとキュルケだけだ。 腰にナイフ、右手にメリケンサックを装備したジュンが、インカムのマイクを口に寄せ る。 「では…現時刻をもって、2ndフェイズ終了。これより、3rdフェイズへ移行する! 総員、隠密行動を心がけよ!付近の『出入り口』のチェックを忘れるなっ!」 トランシーバーから、偉そうねぇ、声がでかいですぅ!、やっぱり似合わないかしら? うるさいわよぉ!、等の返答が返ってきた。 金糸雀は、ヴァイオリンを構えた。 『いっくわよぉ!追撃のカノン!!』 黒板を爪でかきむしるような、神経を逆なでする大音響が厩舎全体に鳴り響き、熟睡し ていた動物たちを叩き起こした。 プチ・トロワの宝物庫内部。 年代物の大鏡から、如雨露を持った翠星石と、絵の具を手にした草笛が降り立った。 「にひひひひぃ~~~~~。さっきの恨み、たあっぷり返してあげるですぅ~~~」 『うわあー!すっごいお宝だらけえ!まずは写真をたっぷり撮って、それからあ~』 グラン・トロワ食料庫。 真っ暗で誰もいない倉庫内。使用人用の手洗い場の鏡が輝いた。出てきたのは、真紅と タバサだ。 「さてと、派手にやるとしましょうか」 タバサはとっくに杖を構えてルーンを唱え始めていた。 「た!大変です!!厩舎で馬やらグリフォンやらが暴れ出しています!!綱は切られ、扉 も破壊されています!動物たちが半狂乱で走り回り、誰も近づけません!押さえられませ んっ!」 「プチ・トロワの宝物庫に賊が侵入しましたぁ!!ひ、被害は、被害わ・・・落書きされ てます!!全ての絵画に意味不明の落書きがされ、彫刻類もデタラメな傷だらけにされて ます!!宝石類は、ネックレスも指輪もバラバラにされて床に散乱しています!恐らく、 かなり紛失してます!!」 「ぐ、ぐらっグラン・トロワ食料庫が破壊されましたぁ!!全ての食料が凍り漬けの、水 浸しで、食器も椅子も全て破壊されました!!なお、なお・・・高級食材の棚が、全部空 にっ!!食われたぁ!!」 「ヴェルサルテイル宮殿の、階段の各所に、その、ロウが塗られています!通ろうとした 者達が次々と転倒し転落、負傷者が続々と」 「庭園各所に、小さな落とし穴が大量に掘られていますぅ!」 「宮殿各所に、子供の口ゲンカみたいな罵詈雑言が書かれてます!どんどん増えてます!!」 「トイレが破壊されました!汚物が、一面に散乱して・・・」 「木々や廊下の間に、ヒモが・・・」 「靴の中に画鋲が・・・」 「あ、お前、背中に、張り紙・・・バカって書いてあるぞ」 「そういうお前、顔にらくがきが・・・」 グラン・トロワ天守は、既にパニック状態だ。 この微妙すぎるイタズラをしまくっているのは、明らかにあの使い魔達。だが、誰もそ の姿を発見出来ない。これほど大規模にやっているというのに、だ。 しかも、その被害の規模が大きすぎる。この広大なヴェルサルテイル宮殿全体に、どれ ほどの人員を使えば、これほどふざけた規模のイタズラを出来るのか?これは、人形達が スクウェアの強さを持っていても、絶対に無理だ。第一、宝物庫の扉は開けられた形跡す らない。 竜騎士隊は全て飛び立ち、宮殿全体を監視している。もう全騎士隊員が血眼で捜索に当 たっている。なのに、全くその姿を、大量に居るはずの侵入者達を発見出来ない。フクロ ウやヘビなどの使い魔達も総動員しているのに、だ それどころか、彼等の掘った落とし穴や、木々の間に結んだヒモやら、階段に塗ったロ ウやら、転んで怪我したとか『フライ』で飛んでてトリモチにひっかかったとか、しょー もない負傷者が増える一方。 ただの平民、それも子供にガリア全てがコケにされている―――もはや天守に居並ぶ重 鎮達は半狂乱だ。額に血管を浮かべ、顔色を赤白青と様々に塗り替え、必死でジュン達を 探せと怒鳴り散らす。 ただ一人、ガリア王ジョゼフだけは、笑っていた。世界を手の平に乗せて遊ぼうかとし ていた王が、逆に遊ばれている。手も足も出ずに、弄ばれている。富と権力を欲しいまま にしてきた周りの有力貴族達が、慌てふためいて走り回る。 全体図上の人形達は、踏みつぶされ、蹴り飛ばされて、部屋一面に散乱していた 「く、くくくくくく・・・・ふはははっははあはははははっっ!!!」 ガリア王は腹を抱えて笑い出した。だが、そんな事すら気付かなくなるほどの狼狽が、 宮殿全体に広がっている。 ひとしきり大笑いしたジョゼフが、おたおたする小姓に紅茶を持ってこさせた。ジョゼ フ王がカップに口をつけると、その美しい眉の間に深いシワが刻まれる。 砂糖壺の中に入っていたのは、塩。 頭上では、ふんぞり返ったお偉いさん方の醜態に、必死で声を殺して笑っている水銀燈 とデルフリンガーがいた。 「さーって、最後の仕上げと、いきましょうかねぇ」 プチ・トロワを眺める林の中に、古い本を持つルイズの姿があった。その背後にはジュ ンと真紅もいる。 「オッケー。・・・みんな聞こえる?3rdフェーズ終了、帰るよー」 ジュンが作戦の終了と撤退を告げる。 真紅は、興味深そうにルイズの持つ本を見ている。 「それが、例の?」 「ええ、『始祖の祈祷書』よ。6000年前、始祖ブリミルが神に祈りを捧げた際に詠み 上げた呪文が記されている・・・つまり、虚無の書」 ルイズの指輪と本が光を放つ。ページを開き、杖を構え、ルーンを唱え始める。 エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ 「これが、ルイズさんの系統、虚無か・・・」 「6000年ぶりの発動ってワケね。今夜は試し撃ちに最適だわ」 オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド ルイズの中をリズムが駆けめぐる。神経が研ぎ澄まされ、宮殿内のパニックも耳に入ら ない。 体の中で、何かが生まれ、行き先を求めてそれが回転していく感じ・・・。 ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ ルイズは、杖を向けた。先ほどまでジュン達を、自分の友達をいいようにいたぶってく れた、あの王女の城を。 ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル…! 長い詠唱の後、呪文が完成した。その瞬間、ルイズは呪文の威力を、理解した。そして 今回の作戦を思い返す。 『ガリアに、うかつにジュン達へ手を出そうと考えれないほどの恐怖を与える。同時に、 今回の戦争にアルビオン側で参戦しようと考えない程度に、笑って済ませれるくらいの被 害で済ます。 だが、ガリアに宣戦布告させる口実を与えないため、全ての非をガリアになすりつけれ るネタを得る事が必須』 そのために、昨日の夜からずっと作戦会議を開き、プチ・トロワとヴェルサルテイル宮 殿へつながるnのフィールドを、みんなで探し続けた。ジュン達に、わざわざイザベラへ 頭を下げさせた。ホーリエとスィドリームを朝のウチからイザベラの部屋に待機させてい た。 なら、私がやる事は一つ! ヴェルサルテイル宮殿に居る全ての人が、見た。 上空を飛び回る竜騎士達も、地上を捜索する花壇騎士達も、グラン・トロワの大臣も、 厩舎周辺を走り回る馬も。皆、空を見上げた。 プチ・トロワ上空に突如現れた、太陽を。 闇夜に突如現れた光の塊が、プチ・トロワの上部を包んだ。 光が消えた時、プチ・トロワの上部が、消えていた。いや、吹き飛び、砕け散り、チリ になったのだ 闇の中にイザベラの部屋が、壁も天井も全て失い、床だけがむき出しになっていた。床 一面がススだらけになっている。そして、その部屋の中にいた人物も。 部屋にいたイザベラと、その警護の騎士達は、ススだらけになっていた。服はボロボロ で、杖も消し飛び、髪は真っ黒のチリチリな縮れ髪になっていた。 特にイザベラの有様は酷い。服はほとんど消失、下着もパンティが僅かに残っているだ け。代わりに白い肌は、ススで顔まで真っ黒になって地肌が見えない。長く青い髪も、当 然チリチリの縮れ髪となって、頭の上にまん丸の大きな黒い毛玉を作ってる。 全員、あまりの事態に、呆けていた。 その様を、ジュンも見ていた。 「うあ、あああ・・・すっげぇ」 真紅も、唖然としている。 「まさか、虚無、これが虚無の系統なの!?」 ルイズは、大きく息を吐いた。 「エクスプロージョン・・・虚無の中でも初歩の初歩の初歩、よ。これでもかなり手加減 したのよ。・・・さ、帰りましょう」 3人は林の中へ消えていった。 「ひ・・・ひぃめぇ~、王女は、ご無事かぁ・・・」 放心状態から、ようやくどうにか我に返ったのは、カステルモール。 彼は、自分の主であるイザベラが、純粋に正直に、本当に大嫌いだった。傲慢で粗暴で 狭量で酷薄で、シャルロット様が叛旗を翻せば、全団員と共に呼応する気だった。 だが、少なくとも今は、彼は東薔薇騎士団の団員だ。職務上、非常に気にくわないが、 今のイザベラの無様な姿を、腹を抱えて大爆笑したいが、ともかくイザベラの身を案じて いた。 その王女は、カステルモールに肩をゆすられ、ようやく正気を取り戻す。カステルモー ルに顔を向ける。いつもテカテカ光るおでこも、今は見る影もない。 「ふ・・・ふぇ・・・」 王女の真っ黒の顔の中、青い目から涙が流れ出す。 「王女よ、もう大丈夫、です。はい、大丈夫・・・です」 言ってる自分は杖も失い、もうボロボロだ。だがそれでも、とにかく立場上、王女を安 心させるため、優しい言葉をかけた。 だが、つぎに見たのは、大嫌いな王女の初めて見せる姿。 「ふえ、ふええええん、うえええ、えええん。うわああーーーーーん・・・」 イザベラは、いつもの虚勢も何もかも忘れ、カステルモールにしがみついて泣き出して しまった。 あの横暴極まりない王女が見せた、年相応の少女の姿。 「大丈夫、大丈夫ですよ。私が守りますから、安心して下さい」 カステルモールは優しく王女を抱きしめ、背中をさする。 「ふええええ、ぐす、ええええん、うわああああああああん」 ようやくのぼり始めた朝日が、二人を照らす。 真っ黒になった王女を抱きしめ慰めるボロボロの騎士。 爽やかな朝の、美しい朝日に照らされた、若い半裸の男女…なのに、あんまり美しくな かった。 第五話 虚無 END 第四部 終 back/ 薔薇乙女も使い魔menu/ next
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ばらしーの休日(1) by ID S+wLnxnB0 氏(129th take) ばらしーの休日(2) by ID BIQyzUuq0 氏(142nd take) 仲良しの休日(ヒナカナ) by ID BIQyzUuq0 氏(142nd take) 短編連作SS保管庫へ
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back/ 薔薇乙女も使い魔menu/ next 時速200kmを超えるゼロ戦の翼に、2体の人形が片膝をついている。 紅い光に包まれる人形が、金色のツインテールをなびかせる。 緑の光に包まれる人形が、茶色のツインテールをなびかせる。 荒れ狂う暴風の中、まるで当たり前のように翼の上にいる。 ゼロ戦の前には、60騎以上の火竜騎兵がいる。 竜騎士の後ろにはアルビオン艦隊。中型以上の10隻が、全くの無傷。 ゼロ戦の後ろにはトリステイン艦隊。小型旧型も含めて10隻が、既にある程度の損害 を受けている。 そして双方とも焼き討ち船4隻を従えている。 「・・・つまりは『ゼロ』が、少女と少年の操るたった一騎が、竜騎士の大群を相手にし ている間に、我らがあの艦隊を倒せばいいのだな」 「ヤツらは『ゼロ』の力を見てます。既に士気は挫かれているでしょう。艦艇数も同数、 背水の陣で決死の覚悟を持つ我らにこそ、勝ち目はあります!」 ラ・ラメー伯爵の皮肉と自嘲混じりな現状分析を、フェヴィスは最大限に前向きに解釈 した。 「ふふふ、そうだな。少なくとも、最初よりは随分と彼我の戦力比は縮まった、と見るべ きだろう」 目の前では、ゼロ戦から放たれた赤い竜巻を、火竜達のブレスが焼き尽くした。直後に 軽快な発砲音が響き渡り、ゼロ戦の機首から火が噴きだした。 伯爵は高々と右手を挙げる。 そして、アルビオン艦隊へ向けて力の限りに振り下ろした。 「全艦前進!最大戦速!!女子供に遅れを取るなど、貴族の名折れぞっ!!」 双方の焼き討ち船全てが、敵に向けて炎をまとい特攻をかける。うち数隻が衝突し、爆 炎をあげて破片と煙を空域にまき散らす。 その炎と煙を突き抜けて、トリステイン艦隊はアルビオン艦隊へ疾走した。 ―――戦いは、両艦隊の砲撃戦へと移行した。 圧倒的戦力、聖地回復という大義、しばしの休暇を得ていたとはいえ、長い内戦で厭戦 気分が現れていたアルビオン軍。対するトリステインは劣勢ながら、首都決戦という背水 の陣にて決死の覚悟で臨んでいる――― 「右から三騎っ!」「くぅっ!?」 デルフリンガーの声にスロットルレバー全開、加速して火竜のブレスを回避。一気に戦 闘空域を離脱して急上昇をかける。 真紅の放つ薔薇がゼロ戦の周囲に広がり、失速反転した機体と共に急降下を始める。 照準器には、1騎の竜騎士が入っている。 「行くわよっ!」「おぉっ!」 真紅のかけ声に、7.7mm機銃が火を噴く。機銃弾を全身に受け、竜も人も力尽きて墜 落していく。 そして真紅の薔薇はゼロ戦の進路全域に広がり、小さな刃物となって、付近の竜とメイ ジに大量の傷と痛みを与え、魔法やブレスの射程への接近を阻む牽制となる。 急降下で竜騎士達の下をくぐろうとした時、一騎の火竜がゼロ戦前方で口を開けて待ち 構えていた。紅蓮の炎が機体の進路を塞ぐ。 「させんですぅっ!!」 翠星石の如雨露が放水、炎を相殺した。ついでに近くの敵艦へ、思いっきり水を撒く。 次の瞬間、戦艦は船底から舷側までツタを生やした。大砲の射線を塞がれ、左右のバラ ンスを崩して傾き、船底に穴が開き、一時戦闘不能に陥る。 ツタを排除してバランスを取り、射線を戻すまで、トリステイン艦から砲弾を散々に撃 ち込まれ続ける。 ―――『魔力を使い果たした』と思われていた鉄の鳥は、確かに急降下時に見せた大火力 は失った。だが、いまだに風竜並みの高機動と、ハルケギニアではありえない長射程の連 射銃を二挺も有している。しかも、カミソリのごとき薔薇の花弁を雲の如くまとい、近づ くことも追う事も出来ない。おまけに、ゼロ戦から撒かれる水が生やす植物が、アルビオ ン艦の行動を阻害する。 天下無双のアルビオン竜騎士も、ゼロ戦の前では機銃の的にしかならない。竜騎士達は ゼロ戦と正面から戦う愚を、仲間達の死をもって思い知らされた――― 「やっぱり、風で水が散って、いつもの威力が出ンですぅ」 左翼の翠星石がぼやく。 「薔薇も同じよ。おまけに、あの火竜のウロコはとても固いわ。致命傷を与えるのは難し いわね」 右翼の真紅も忌々しげに頭上の竜騎士を見上げた。 「大丈夫!機銃なら、なんとかダメージを与えれる!危ないからゼロ戦から離れるな よ!!」 ジュンは操縦桿を引き、急降下で地上すれすれまで離脱したゼロ戦を、炎上する街の煙 に隠して上昇させる。 つっても、一騎倒すためにこんだけ撃ちまくってたら、弾が全然足らないや。第一、 気になるのは… ジュンが視線をチラリと左手へ移す。包帯の下のルーンが、光を放ち続けている。 ゼロ戦は再び遙か上空まで上昇、反転して竜騎士へ機首を向ける。 「2騎が戦艦を襲ってるわっ!!」 ルイズの叫ぶとおり、二騎が艦隊前方の戦艦へ上からブレスを放っていた。帆が燃やさ れ、甲板に向けて騎士も『ファイア・ボール』を撃つ。甲板上にいる数人のメイジが氷の 矢を放って応戦、『エア・シールド』で炎を防御する。 その船の横っ腹にいきなり大穴が開いた。敵艦の砲弾が命中したのだ。大穴からは煙も 上がる、火災が生じたらしい。 ―――戦闘空域全体を見れば、ゼロ戦が火を噴くたび、火竜が確実に1騎減っていく。だ が、その間に砲撃戦で必死なトリステイン艦隊は、竜騎士にも襲われる。 竜騎士達は既に散開、トリステイン艦隊へ目標を移していた。太刀打ち不能なゼロ戦を 相手にせずとも、艦を全て落とせば勝利出来るのだから。何より、トリステイン艦に接近 していれば、同士討ちを恐れるゼロ戦の機銃を避けられるから――― 「くそ!デル公っ!?」 「俺たちゃ竜騎士に集中するんだ!!余計な事は考えるなっ! 一撃離脱を忘れるなよ!あんな砲弾と魔法が飛び交う中でちんたらしてたら、流れ弾喰 らって終わりだぜっ!」 「ぅううおおおおおっっ!!」 ゼロ戦は、再び紅い薔薇の雲をまとって、戦艦へ向けて急降下を開始した。 「艦長ぉっ!『ゼロ』がぁっ!」 「やったっ!竜が逃げていくぞっ!!」 船員達の目に、ゼロ戦の接近に気付いた竜騎士が、慌てて艦の陰へ隠れていく姿が映っ ていた。 「副長!消火急げっ!!左舷砲撃戦準備だッ!9から15までは散弾込めぇっ!!」 艦の左前方から、敵艦が急接近しつつあった。そして急速に右へ回頭、左舷の砲列を向 ける。同時に艦長も面舵を指示し、艦を右へ向けて大砲を敵に向ける。散弾を込められた 大砲は、射程に竜騎士が入るのを待ち構える。 「撃てぇっ!!」 そして甲板上でも、メイジ達が杖をふって魔法の矢を、炎の塊を、フリント・ロック銃 の弾が届く距離でもないのに銃まで撃ち合っている。 ―――両艦の間を大量の鉄の塊が、魔法が、騎士とゼロ戦が高速ですれ違う。全ての艦は 舷側が穴だらけになっていた。敵味方とも、無傷の艦は一隻もいない。 確かにゼロ戦の速度と射程は竜騎士を遙かに上回る。だがそれでも、戦闘空域全体に散 る竜と戦艦を相手にするには、一機では足りなかった。一隻を助けに向かう間に、他の艦 が竜騎士に襲われる。 また、機首7.7mm機銃は小銃の弾とほとんど変わらない。そのため、火竜の固い鱗を 貫くのがやっとだった。また、火竜は巨大なため、小銃の弾で戦闘不能なまでのダメージ を与えるのが困難だ。このため、ジュンは騎士をのみ正確に狙わねばならなかった――― 「砲術長!りゅ、竜がぁ!!」 『メルカトール』号の舷側に取り付いた火竜の首が、大砲が突き出る穴に向けて口を開 ける。平民の砲手は、手に持っていた火薬壷をそのまま投げつけた。 ドンッ! ブレスを放った火竜のすぐ近くで火薬が爆発、火竜の頭を吹っ飛ばした。同時に、投げ つけた砲手と大砲と砲術長も、舷側ごと吹き飛び、黒こげの肉片となって消えた。 火竜に乗っていた騎士は『フライ』で飛び、火を噴く舷側の大穴に満足して近くの味方 まで下がろうとした。 ボンッ! 空気の塊が騎士を襲い、その体を舷側へ叩き付ける。騎士は衝撃で杖を落とし、地上へ 落下していく。 舷側の上から震える手で杖を向ける、血まみれのマリコルヌとスティックスがいた。 「ぐふぅぉ!げふ・・・フェヴィス艦長ぉ!もう、だめで、す!!待避命令を!!」 既に火が、魔法でも消せない勢いになった艦では、ブリッジも煙が充満していた。艦長 は歯ぎしりを響かせて、正面の大型戦艦を睨み付け続けている。 代わりにラ・ラメーが指示を飛ばす。 「やむを得ん…副長、総員待避指示を。メイジは平民の乗るボートに『レビテーション』 をかけ、牽引しつつ速やかに『フライ』にて地上へ降下せよ」 「はっ!」 副長は乗員達に退避命令を飛ばし、伯爵と共にブリッジを出ようとした。だが、その足 を止めて振り向く。そこには、動こうとしない艦長がいた。 副長が足を引きずって駆け寄ってきても、視線をずらさない。 「何をしている、早く待避せよ」 「艦長も!早く!!」 「私には、最期にやる事がある」 フェヴィスの視線の先には、アルビオンの戦艦がいた。 その姿に、伯爵も駆け戻ってきて艦長の肩を掴む。 「よせ!待避せよ、これは命令だっ!!」 「いえ、艦長としての責務です。貴族の名誉を、トリステインを守るために」 「忘れたのかっ!?レコン・キスタが自壊する日まで、我らは地に伏して反抗の時を待た ねばならんのだぞ!」 「!!、く・・・」 フェヴィスが一際激しい歯ぎしりを響かせる。唇の端から一筋の血が流れる。 「トリステイン貴族として、最後まで生きて戦うのだ」 「・・・はっ!」 フェヴィスを伴い甲板に出ると、皆大慌てで脱出準備をしていた。 脱出艇が離れると同時に、戦艦は急激に高度を下げ、炎を上げながら街へと墜ちていっ た。 ―――ゼロ戦の支援を受け、トリステイン艦隊は善戦した。しかし、それでも損害は大き かった。『メルカトール』号のみならず、他の艦も次々と炎を上げて墜落していく。そし て、決死の反撃を受けるアルビオン艦隊からも、墜落する艦が現れ始めた。 艦隊が落とす火の粉、砲弾、破片、死体、そして燃えさかる艦が街に降り注ぐ。火災は 既に下町も邸宅も区別無く、トリスタニアの1/2を焼きつつあった その街の中を城へ向けて、アルビオン陸戦隊5000人が火を避けて進軍していく。そ の真上には浮遊砲台と『竜の巣』号が浮いている。 もはやアルビオンには竜騎兵も衛士隊もおらず、敵艦隊も遙か彼方で苦戦中という事も あり、十数騎の竜騎兵は索敵の数騎以外『竜の巣』号にて翼を休めている――― 「閣下、何も・・・いません。周囲に敵はおろか、罠すらありません」 大勢のメイジに囲まれて前進する一団の中心に、不審がる護衛からの報告を受けるホー キンス将軍がいた。 隣の太ったメイジに話しかけながらも、将軍の目は遠くの城を見つめる。 「もしや、全軍で籠城する気かな?ホレイショ、どう思う?」 「私なら、城までおびき寄せて、別働隊と挟撃・・・という所なのだがな」 「上空からは、城の周囲にも、どこにも全く敵は見えない、との事だよ」 「ふぅ~む・・・まあ、城に旗を掲げないと勝利した事にならないんだからな。行くしか ない」 「まぁ、そうだね。ともかく奇襲に気をつけて、慎重に行こう」 陸戦隊と浮遊砲台の列はゆっくりと、遠くに見える城まで進軍を続けている。 次々と墜落していく艦と竜、炎上する街を遙か遠くの林の中で見つめる人物がいる。彼 等、一人の女性と二人の小さな少女は、ひときわ高い木の梢から、大きな望遠鏡で戦況を 見つめ続けている。 『うわああ!ダメっ、ジュンジュン!逃げて、上よっ!!』 草笛みつが、手に汗を握りながらゼロ戦へ声援を送っていた。 『船が、船がどんどん墜ちていくのかしらーっ!あーっ!!もう、見ていられないわ!ゴ メンみっちゃん、あたしも行くわ。ピチカート!』 金糸雀が人工精霊を呼び出し、ヴァイオリンを手にした。 『バカ言ってンじゃないわよぉ!忘れたの?あたし達の存在は、このハルケギニアの、誰 にも知られちゃいけないのよ!今、ここでこうしているだけでも、とてつもなく危険なの よぉ!?』 水銀燈は乱暴に金糸雀の肩を掴み、必死に押さえつける。だが、叫んでいる水銀燈自身 も必死の形相だ。 『あ、あああ、ぎゃあーーーーーーーっっ!!』 草笛の悲鳴に、二人も上空を見上げる。そこには『メルカトール』号からの脱出艇と、 それを襲おうとする竜、さらにゼロ戦が急速に接近しようとする姿があった。 『メルカトール』号からの脱出艇はメイジ達に守られ、地上へと降下を続けている。だ が、それは竜騎士には格好の標的だ。脱出艇に『レビテーション』をかけていたり、脱出 艇に入りきれず『フライ』を使っていたメイジは、他の魔法が使えない。このため、攻撃 を避ける事も反撃する事も難しいのだから。 一騎が脱出艇に気付き、急降下で迫っていた。そして、ゼロ戦からもその姿は見えてい た。一機と一騎と一艘は、急速に相互の距離を縮めつつある。 周囲を飛んでいたメイジ達が逃げまどう。 火竜が口を開き、紅蓮の炎を吐き出そうとする。 脱出艇に乗っていたメイジ達が『エア・シールド』『ジャベリン』を詠唱する。 ジュンが火竜に乗る騎士を照準器に入れる。 ドゥッ! 何かが吹き飛ぶ音がした。 だが、まだメイジ達は魔法を放ってはいない。 火竜もブレスを吐いてはいない。 ゼロ戦も機銃を撃ってはいない。 音は、ゼロ戦の尾翼と、右昇降舵からしていた。 メイジ達も、騎士も、火竜も見た。 尾翼と右昇降舵が吹き飛び、きりもみをしながら墜ちていくゼロ戦を。 『メルカトール』号を撃沈させた戦艦からの散弾が命中したのだ。 「や・・・やった!?当たったぞっ!!」 「ほ、砲術長!やりました、さ、さすがですよ!!」 「な!?言ったとおりだろぉが!!あいつらは絶対、あのボートを助けに行くって言った ろうがよぉ!!」 「お見事です!大戦果ですっ!!勲章モノですっっ!!!」 戦艦の中ではアルビオン士官達が手を取り合い、大砲を囲んで万歳を叫んでいた 回転しながら墜落するゼロ戦。火が吹き出し、煙の尾をひいている。座席の後ろではル イズがデルフリンガーを抱いたまま、機体の中で振り回され打ち付けられる! 「きゃああああーーー・・・!」「ジュンッ!!逃げるですぅ・・・」 翼に取り付いていた薔薇乙女達も遠心力で遙か遠くへ跳ね飛ばされる! 「うぅおお!!!」 ジュンは腰のナイフを抜いた。キャノピーのガラスに突き立て、一気に割り大穴を開け る! 「ルイズッ!!」「ジュンッ!!」「飛べぇっ!!」 ルイズが必死にジュンの腕にしがみつく。同時にジュンはナイフで腰と両肩のベルトを 切り、操縦席から宙へ飛んだ。 ルイズの長いピンクの髪が、マントが突風を受けて上へ伸びる。 落下しながらも、ジュンはルイズの体をしっかりと抱き寄せ、デルフリンガーのベルト に腕を通す。 二人はしっかりと互いを抱きしめながら、真っ逆さまに落ちていく。 ゼロ戦は、郊外の森へと落ちていった。 「上だっ!!」 デルフリンガーが叫び、ジュンとルイズは上を見た。 そこには、ボートを無視して二人へ向かって急降下してくる竜騎兵がいた。 竜が大きく口を開き、騎士は杖に雷をまとわせている。 「つっ杖を!」「くぅっ!?」 ルイズは慌てて胸元から杖を抜こうとし、ジュンは握っていたナイフを竜の口へ投げつ けた。 だがルイズの杖は、二人がしっかりと抱き合っているがため、胸元から抜き出せない。 ジュンのナイフは、強風の中でも竜の口に向かって飛んだ。しかし、竜の牙に弾かれてし まう。 「ホーリエッ!」「スィドリームぅっ!!」 体勢を立て直した真紅と翠星石が、慌てて人工精霊を放つ。だが、間に合わない。 竜の牙と、騎士の雷が、二人を貫き―――― だが、二人は貫かれなかった。 代わりに、火竜の頭が『ブレイド』を付与された杖に、後頭部から下顎まで貫かれた。 騎士は、首が無かった。 「「なっ!?」」 二人は、火竜の更に後ろから、突然急降下してきた人物を見た。 一瞬で背後から騎士の首を切り落とし、竜の後頭部に杖を突き立てていたのは、不適な 笑みを浮かべる男。 ワルドだ。 ワルドは、跳ね飛ばされた真紅と翠星石が二人の元へ飛んで戻ってくるのを確認する。 そして 「借りは返したぞ!」 と叫ぶや、ボンッ!という破裂音と共に、その姿はかき消えた。 「大丈夫!?二人とも」「はぁ~危なかったですぅ」 真紅はジュンの手を、翠星石はルイズの手をつかまえ、ようやく二人は落下速度を下げ る。 そして四人が空を見上げると、そこには巨大竜巻があった。『メルカトール』号を撃沈 しゼロ戦を落とした戦艦は、竜巻に飲み込まれていく。帆を引き裂かれ、マストがへし折 れ、渦の加速に船体がきしみをあげて歪んでいく。 戦艦が、折れた。 竜巻が生む加速に、戦闘でダメージを受け続けていた船体自体が耐えきれず、真ん中か ら裂けたのだ。そして周囲の竜騎士も数騎、巻き込まれ吸い込まれていく。 一騎のグリフォンが竜巻から離れ、トリステイン艦隊の後方へと飛び去っていくのが見 えた。 「艦長!あれは、あのグリフォンは、まさか!?」 「あれは・・・間違いない!ワルド子爵だ!!生きておられたか!!」 ワルドが駆るグリフォンは、あちこちから煙を上げつつも、未だ無事に健在だった唯一 の艦『イーグル』号の甲板に降り立った。そして飛来してくる火竜騎士へ杖を向ける。 「『ウインド・ブレイク』!!」 ワルドが放った風は、火竜のブレスを押し返すほどの暴風。跳ね返された火炎に騎乗し ていた騎士自身が巻き込まれ、炎に包まれ悶え苦しみ、竜から落ちる。主を失った火竜は 憎々しげに唸り声を上げ、飛び去っていった。 岩をも溶かす火竜のブレスを跳ね返すワルドの魔力に、ブリッジのウェールズも感嘆を 禁じ得ない。 「ふはははっ!さすがは風のスクウェアだっ!パリー、どうやらこの戦い、まだ分からん ぞ!?」 隣にいるパリーも、力一杯に何度も頷く。 「ですなぁ!見たところ戦艦の数は、アルビオンが7,トリステインは6。竜騎士がまだ かなり残っていますが、なぁに!どっちも既にボロボロですからな、ここからは気合いの 勝負ですぞ!!」 そんなウェールズ達の姿は、甲板のワルドからも見えていた。ワルドの参戦を素直に喜 び、気勢を上げる船員達を横目に、ワルドは一人、皮肉っぽく笑う。 …やれやれ、だ。まさか裏切ったはずの国に戻り、暗殺するはずだった相手と共に、 仲間になるはずだった組織相手に戦う事になるとはなぁ。世の中はわからんものだ。 そんなワルドの独り言を聞く者はいなかった。いるのは、結局自分で味方に選んだ背中 の人々と、敵に選んだ目の前の艦隊と竜騎士達。 風のスクウェアが唱えるルーンは、空域を揺るがす程の魔法を生み出しつつあった。 ゆっくりと降下していくルイズ達四人は、だんだんと降下速度を上げつつあった。 「ちょ、ちょっとスイ、早いんじゃ、ない?」 「あううぅ~、重いですぅ~」 「しっ失礼ね!あたし、そんなに重くないわよ!?」 「そうじゃ、なくて、ですねぇ~」 翠星石の体を包む緑の光は、だんだんと力を失いつつあった。真紅の赤い光も、おぼろ げに薄くなっていく。 ルイズがタラ~リと流した冷や汗は、風に飛ばされ宙に消える。 「えと、まさか、もう、魔力切れ?そんなっ!?」 ジュンの手を握る真紅が、苦しげに顔を歪めながら呻くように答える。 「ルイズ。ガンダールヴの力、あたし達3人で、使って、いるのよ・・・」 当のジュンは、呼吸も荒く大汗をかいている。 「そ、そうだ、から…僕ら3人が、フルパワーで、使い続ければ・・・あっという間に、 エネルギー切れ!!」 「おおおでれえたああーーーっっ!!」 言ってる間に、どんどん降下速度は、というより落下速度は上がっていく。 「キャー!待って!待って耐えてえーっ!!せめて、あの屋敷の庭まで耐えてええー!」 「やってるですよっ!やってるですから、暴れないでぇ!!」 ルイズ達は街はずれの、一番風上にあったため燃えずに済んだ屋敷の前に着地、という より落ちた。 「はあっはぁあっふぅはぁぁっ、はぁああ~~・・・。だ、ダメだ、もう、動け、ない」 「まぁ、なんとか無事に降りれたようだわな」 ジュンは地上に降りるやいなや、ひっくり返って倒れてしまった。慌ててルイズが駆け 寄る 「ジュン!大丈夫!?」 「僕は、だいじょう、ぶ・・・しぃ、真紅と、翠星石は?」 「ダメ、ね・・・もう、倒れ、そう」 「ここは、危ない、です・・・家に、入ら、ない、と・・・」 真紅と翠星石も、地面にうつぶせで倒れたまま、起きあがれずもがいていた。 ルイズは慌ててテラスに向かい、石を投げつけてガラスを割った。そこは立派な天蓋付 きベッド、大きなテーブルを挟んで並ぶソファー四つ、執務用デスクなどが並ぶ、どこか の貴族の私室らしい。 真紅と翠星石を抱えて室内に飛び込み、ソファーに座らせる。そしてジュンの肩を支え て、彼をベッドに寝かせた。デルフリンガーも運び入れて壁に立てかける。 テラスから上空を見上げると、まだ艦隊戦は続いていた。 彼等の付近には竜騎士も陸戦隊も、何も見えない。街を焦がす炎も煙も、遙か遠くだ。 戦闘地域から離れた事を確認し、ルイズはようやく大きな息をついた。壁にもたれ、ずる ずると床に崩れていく。 「お疲れさん。後は俺ッちが見張っておくから、少し休みな」 「そ、そうさせてもらうわ・・・」 デルフリンガーに見張りを任せ、4人ともそのまま動かない。沈黙が流れる。 「なんとか、助かったわね」 「だな」 うつむくルイズのつぶやきに、答えたのは長剣だけ。他の誰も答えなかった。 「・・・ねぇ、みんな?」 ソファーに座る薔薇乙女に視線を移す。だが二人は、まるで眠っているかのように動か ない。 「ねぇ・・・寝ちゃったの?」 ルイズは初めて見る薔薇乙女達の姿に、一抹の不安を抱く。重い体を必死に起こし、ソ ファーへ歩いていく。真紅の頬をペタペタ触るが、何の反応もない。 「シンクも、スイも、どうしたの?ねぇ!?」 「おうおう!?二人とも、どうしたってんだ?」 慌てて翠星石に駆け寄って体をゆすってみる。だが翠星石の目は閉ざされたまま、ただ 頭がカクカクと揺れるだけ。 「大丈夫だよ・・・エネルギーが切れたんだ」 ベッドで寝たままのジュンが、ささやくような声を、それでも必死に紡いだ。 「力が切れて、眠っているんだ。大丈夫、ネジを巻けば、すぐに起きるよ」 「シンクもスイも、二人とも、寝てるの?」 「ああ。ネジなら、今ポケットに」 そう言って弱々しく腕を持ち上げたジュンに、ルイズがゆっくりと歩み寄る。 「二人とも、今は、寝てるのね」 「そうだよ。・・・えと、何?」 ルイズは、ベッドで仰向けに寝ているジュンのすぐそばまで来た。まっすぐにジュンを 真顔で見下ろしている。 そして ジュンの上に、覆い被さった。 ルイズの唇が力一杯、ジュンの唇に押しつけられた。 もはや疲れ果て、まともに腕を上げる事も出来ないジュンの首に、肩に、ルイズの腕が 力一杯からみつく。 見開かれた彼の瞳には、溢れだした彼女の涙が止めどなく落ちてくる。 少女の細い足が、少年の足へ愛おしげにすり寄せられる。 ジュンのこわばる右手に、ルイズの左手が重ねられる。 二人の指が、しっかりと互いを握りしめる。 残る互いの腕が、相手の腰へ回される。 二人の足が絡み合う。 小さな体が激しくすり合わされ、押しつけられ、互いを包もうとする。 重なる唇から、二人の唾液が混じり合って溢れ、ジュンの頬をつたい落ちる。 ルイズの舌が、落ちゆく雫を追ってジュンの肌を這う。 二人は互いの頬に何度もキスし、優しく耳朶を噛む。 そして、ルイズの舌はジュンの首筋へと降りていく。 全身を貫く初めての感覚に、ジュンの頭がのけぞる。 うっすらと開けられた彼の瞳に、ソファーに座る薔薇乙女の姿が逆さに映った。 とたんに、彼は真っ青になった。 「ま!待ってルイズさんっ!!ダメ、今は、まずいぃっ!!」 だが、ルイズは止まらない。彼女の指が彼の服のボタンを 「ごっゴメンんっっ!!」 最後の力を振り絞り、ルイズの腕を振り払って飛び退いた。 どてっ 飛び退きすぎて、床に頭から落ちた。 「どうして・・・どうして、ダメなの?」 ベッド上のルイズが、哀しみの色を浮かべてジュンを見つめる。 「あ、あの、真紅くくくとと、すいせいせいせい」 「二人とも、今は寝てるんでしょ?」 「そ、そうだけど!」 「だったら、今しかないんだもん。 お願い、あたしにもジュンのために、何かさせて欲しいの。今、あたしにできるのは、 これくらいしか」 「いっいいい、いや、その、今が、まずいんであって、敵が来るとかどうとか言うんじゃ なくて、その!!つまりっっ!!!」 ジュンはよろよろと立ち上がり、ポケットからネジを取り出した。そして、冷や汗をダ ラダラと滝のように流しながら、真紅の背中の穴にネジを差し込んで、震える手でゆっく りと回す。 きりきりと、ゼンマイが巻かれる音が響く。 ゆっくりと真紅の目が開き びったーーーーーーんっ! 真紅の平手打ちが、渾身の力を込めて、ジュンの頬に叩き付けられた。 「じゅ・・・じゅ、じゅ、ジュン・・・あなたって人は、あなたって、あなたってぇ!! あなたって人はあーーーーーーーーーっっっ!!!」 びしばしぼこすかどこげしょぶかべけどてぴろぽてこき 真紅の蹴りがステッキが頭突きがツインテールの髪が平手打ちが鉄拳が。 ジュンを瞬く間にボロボロのズタズタに変えていく。 はぁっはぁっはぁっ… 真紅は、自分のミーディアムが、かつて人間だったモノに成り果てたのを確認した後、 じろりとルイズを睨み付ける。 そのルイズは、あんぐりと開けた口が塞がらない。 「し、ししししシンクぅっ!?」 「るぅいぃずぅ~・・・何、かしら?」 「あ、あああ、あなた、寝てたんじゃ?」 「寝てたわよ!でもね、私達ローゼンメイデンの眠りは、人間のそれとは違う物なのよ。 寝てても、周囲の状況はちゃんと分かるのよぉっ!!おまけに!あたし達は指輪を通 してミーディアムの心と繋がってるんだわ!!だから、ジュンの思考や感情も流れ込 んでくるのよっっ!!!!」 「なあああーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!」 真紅は、チラリと翠星石を見る。 そして、ルイズを見る。ニヤァリと笑いながら。 「ルイズ」 「はっ!?は、はぅい・・・」 「翠星石が、まだ寝てるわ」 「う、うん、寝てる・・・わね?」 「起こして頂戴」 「あうぐぅっ!あ、あたしは、その・・・」 「大丈夫、簡単よ。そこのネジを回せばいいだけ」 真紅がステッキで指し示す先には、もはや赤いゴミ袋と化したジュンの手から落ちた、 翠星石のネジ。 「薔薇乙女の目覚めは、いわば、ミーディアムにしか許されない行為よ。光栄に思いなさ い」 「あ、なら、それも、ジュンに」 「生憎と、ジュンはもうネジを回す力も残ってないの」 どすっ! 真紅の靴が、何か生物の頭部だったモノを力一杯踏みつける。 「さあ、やって頂戴」 「あ、あう、ううぅ」 顔を引きつらせたルイズは、恐る恐る真紅からネジを受け取り、震える手で翠星石のネ ジを回して 「こおおんのぉおおおおおおおおちちちんちくりんわああああああああああああああ」 びしばしぼこすかどこげしょぶかべけどてぴろぽてこき 飛び起きた翠星石に、ボコボコにされた。 back/ 薔薇乙女も使い魔menu/ next
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